隠ぺい又は仮装(14)

 

 

 

 本件は上告されました。最高裁判所第二小法廷(上告審)、平成 7年 4月28日判決を検討します。

 

 

 

 

 

 

 

 

裁判官全員一致の意見

 

 

 

 

 

 過少申告をした納税者が、その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、その納税者に対して重加算税を課することとされている(国税通則法六八条一項)。この重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて隠ぺい、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。

 

 

 

 したがって、重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず

 

 

 過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、

 

 

 これに合わせた過少申告がされたことを要するものである。

 

 

 しかし、右の重加算税制度の趣旨にかんがみれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、

 

 

 納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、

 

 

 その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、

 

 

 その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の右賦課要件が満たされるものと解すべきである。

 

 

 

 

 

 

 

 税理士は、納税者の求めに応じて税務代理、税務書類の作成等の事務を行うことを業とするものであるから(税理士法二条)、税理士に対する所得の秘匿等の行為を税務官公署に対するそれと同視することはできないが、

 

 

 他面、税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において納税義務の適正な実現を図ることを使命とするものであり(同法一条)、納税者が課税標準等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし、又は仮装していることを知ったときは、その是正をするよう助言する義務を負うものであって(同法四一条の三)、右事務を行うについて納税者の家族や使用人のようにその単なる履行補助者の立場にとどまるものではない。

 

 

 右によれば、上告人は、当初から所得を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものであるから、その意図に基づいて上告人のした本件の過少申告行為は、国税通則法六八条一項所定の重加算税の賦課要件を満たすものというべきである。