隠ぺい又は仮装(13)

 

 

 

 原告は控訴しました。本日は、大阪高等裁判所(控訴審)平成 6年 6月28日判決、税務訴訟資料201号631頁を検討します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 控訴審の判示事項です。

 

 

(控訴人の当審における主張に対する判断)

 

 

 

1 控訴人は、本件において、いわゆる「隠ぺい、仮装し」とは積極的に税務調査を困難にするような何らかの操作をすることを意味し、それらがなされたというためには、株式等の売買名義、売買事実等について、隠ぺい、仮装がなされることを要する旨主張する。

 

 法六八条一項の規定にいう事実の「隠ぺい」とは、納税者がその意思に基づいて特定の事実を隠匿しあるいは脱漏することを、事実の「仮装」とは、納税者がその意思に基づいて、特定の所得、財産あるいは取引上の名義を装う等事実を歪曲することをいうものと解すべきであるが、

 

 必ずしも控訴人主張のような「操作」をすることを必要としないものと解するのが相当である。

 

 

 これを本件についてみると、前認定の事実関係から明らかなとおり、控訴人は、確定的な脱税の意思に基づいて、自己の株式等の売買により所得があったことを隠匿し、その所得部分を脱漏させて、ことさらに所得金額を過少にし、内容虚偽の記載をした確定申告書を顧問税理士に作成させて提出していたのであるから、控訴人において右条項にいう隠ぺい行為等をした(少なくとも同条項の規定にいう事実の「隠ぺい」をした)うえ、それに基づく納税申告書を提出していたものと認めるに妨げない。

 

 

 したがって、右事実を認定したうえ、控訴人の行為が隠ぺい行為等に当たる旨を判示した原判決には、控訴人主張の違法はなく、控訴人の引用する各裁判例も、以上の当裁判所の説示と異なる判示をしているものではない(なお、控訴人が甲第一九号証、第二〇号証として提出する大阪高等裁判所平成四年(行コ)第一二、第一三号各所得税重加算税賦課決定処分取消請求控訴事件の判決は、いずれも納税者が各係争年度の営業につき正常な会計帳簿類を作成記載しており、その収益・資産を帳簿から除外したり、経費・負債を過大に計上したりすることはなく、取引記録、各期間の貸付金・利息の入出金を集計した記録はそろっていた事案に関し、納税者の過少な申告が、隠ぺい、仮装の行為による不正な経理に基づくものと認めるに足りる証拠はないとして、税務署長のした処分を取消したものであって、本件とは事案を異にし、本件に適切ではない。)。控訴人の主張は採用することができない。

 

 

 

2 控訴人は、原判決は、租税を免れる目的で故意に虚偽の内容の申告書を提出する行為が、隠ぺい行為等に当たるかどうかについて、判断を遺脱している旨主張する。しかし、本判決が訂正等のうえ引用する原判決の判示によれば、原判決は、控訴人が、本件各年分の株式等の売買による所得を申告しなければならないことを熟知しているにもかかわらず、確定的な脱税の意思に基づいて、右の取引資料を全く保存せず、確定申告書作成のために自ら依頼した税理士に対しても課税要件を充足する株式等の売買による所得があったことを隠匿し、右税理士から所得に関する資料の提出を求められたのに対し、自己の他の種類の所得についての資料を提出しながらも、株式等の取引に関する資料を提出せず、その所得部分を脱漏させて、ことさら所得金額を過少にした内容が虚偽の申告書を右税理士に作成させたことが、法六八条一項にいう隠ぺい行為等に当たる旨を判示したうえ、この内容虚偽の確定申告書を提出することが、同条項の「その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していた」場合に該当する旨を逐次判示しているのであるから、原判決は、同条項が定める重加算税賦課のために必要な要件たる事実関係につき、これを過不足なく認定、判示しているものということができる。したがって、原判決に控訴人主張の不備、違法はない。控訴人の右主張は採用することができない。