役員退職給与の過大支給と第2次納税義務(4)

 

 

 

 引き続き課税庁側の主張を検討します。

 

 

 

 

 原告らについて妥当とされる退職金額はそれぞれ一五七九万二〇〇〇円であり、本件各退職金のうち、それぞれ四〇〇〇万円を超える金額が損金に算入できないことを前提としてされた本件修正申告は、少なくとも四〇〇〇万円を超える金額を損金に算入できないという限度においては、実態に符合しており、修正申告書の記載内容には何ら錯誤はないというべきである。

 

 

 

 仮に右の点をおくとしても、納税申告書の記載内容の過誤の是正について、法定の方法によらないでその記載内容の錯誤を主張することができるのは、その錯誤が客観的に明白かつ重大であって国税通則法その他税法の定めた方法以外にその是正を許さないとすれば、納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合に限られる。

 

 

 

 これを本件についてみると、日本橋税務署長の命を受けた所部職員は、訴外会社の昭和六三年六月期の確定申告書の記載内容を検討し、調査の結果、少なくとも本件各退職金のうち二六三二万円(最終報酬月額四〇万円に平均功績倍率三・二九を乗じ、さらに、勤務年数を二〇年として、これを乗じて算出された金額)を超える部分が過大であり損金に算入できないものと判断し、修正申告をするよう行政指導したところ、訴外会社は、税務に関する専門知識をもつ税理士が行政指導の内容を検討した結果を踏まえ、自らの判断により本件修正申告を行ったものである。

 

 

 

 したがって、本件修正申告に客観的に明白かつ重大な錯誤はなかったというほかなく、仮に本件修正申告に原告ら主張のとおりの錯誤があったとしても、これをもって法定の是正方法によらないでその無効を主張し得べき特段の事情のある場合に該当するということはできない。