役員退職給与の過大支給と第2次納税義務(1)

 

 

 東京地裁平成七年(行ウ)第三七号、平成九年八月八日民事第三部判決、判例時報1629号43頁について検討します。

 

 

 

 

 

 有限会社玉英堂彦九郎(以下「訴外会社」という。)は、和菓子の製造販売を主な業とし、原告らの父今江利春(以下「利春」という。)を代表取締役とする同族会社であったが、昭和六三年三月二二日、同社所有に係る東京都中央区日本橋蛎殻町二丁目七番五六の土地及び同所七番地二六所在の建物(以下「本件土地建物」という。)を株式会社トータスに対し二億三三八〇万円で売却した。そして、訴外会社は、同年六月三〇日、臨時社員総会において清算人を利春とすることにして、同社を解散する旨の決議をし、同年七月一二日、右解散及び清算人就任の登記を経由した。

 

 

 

 

 

 訴外会社は、右臨時社員総会において、同社の原告らを含む役員その他の社員に対し、退職慰労金及び特別功労金として、本件土地建物の売却益にほぼ相当する合計二億一二六〇万円を支給する旨決議し、昭和六三年八月三一日、右役員らに対しこれを支払った。

 

 

 訴外会社は、右退職慰労金及び特別功労金の全額を損金の額に算入した上で、同年九月二九日、昭和六二年七月一日から昭和六三年六月三〇日までの事業年度(以下「昭和六三年六月期」という。)の法人税の確定申告書を日本橋税務署長に提出した。

 

 なお、その直後である同年九月三〇日、訴外会社の役員及び社員の全員を取締役等の役員とし、訴外会社と同じ菓子製造販売業を営む有限会社玉英堂(以下「新会社」という。)が設立された。

 

 

 

 

 

 

 訴外会社は、平成元年六月二一日、日本橋税務署長に対し、昭和六三年六月期における法人税について、原告らに対する退職慰労金各六四〇〇万円及び特別功労金各一六〇〇万円の合計各八〇〇〇万円(以下「本件各退職金」という。)のうち、それぞれ四〇〇〇万円は過大な退職金であるとして自ら損金算入を否認し本税三二八四万〇一〇〇円及び利子税一九万七〇〇〇円とする修正申告書を提出した(以下、この修正申告を「本件修正申告」という。)。

 

 

 日本橋税務署長は、平成元年七月三一日、右本税に対し、納期限を同年八月三一日とした過少申告加算税四九〇万〇五〇〇円の賦課決定をした。

 

 

 

 

 

 被告は、訴外会社が滞納した法人税本税三二八四万〇一〇〇円、利子税一九万七〇〇〇円及び過少申告加算税四九〇万〇五〇〇円並びに本税に対する延滞税(以下、これらを併せて「本件滞納国税」という。)を徴収するため、平成三年四月一七日、訴外会社が株式会社住友銀行(水天宮支店扱い)に対して有する三万五〇〇〇円の当座預金債権を差し押さえたが、その当時、訴外会社には他に差し押さえるべき財産はなかった。

 

 

 

 被告は、平成三年五月二一日、原告らに対し、本件滞納国税の第二次納税義務者として、各自四〇〇〇万円を限度として、同年六月二一日を期限として本件滞納国税の全額を納付すべき旨の各告知処分(以下「本件各告知処分」という。)をした。