過去の誤謬の訂正(4)

 

 

 当社は、前期に仮装経理(いわゆる粉飾決算)をしたところに基づき過大申告を行っていましたが、これを是正するため、当期において法人税法第129条の「修正の経理」を行った上で、所定の手続により法人税額の還付又は控除を受けたいと考えています。

 

 

 ところで、当社が前期に行った仮装経理は会計上の誤謬に該当すると考えますので、その是正に当たっては修正再表示による処理を行うことになります。

 

 

 この修止再表示による是正を行った場合でも、法人税法第129条の「修正の経理」と認められるのでしょうか。

 

 

 

 

 

 修正再表示による処理は、法人税法第129条の「修正の経理」として認められます。

 

 

 

【解説】

 

 

 

1 法人税法第129条の「修正の経理」については、過年度遡及会計基準の導入前において、仮装経理をした法人がその仮装経理をした事業年度後の事業年度の確定決算において「前期損益修正損」等として経理することにより修正の事実を明らかにすることと一般に取り扱われてきました。

 

 この過年度遡及会計基準導入前の取扱いは、過年度の仮装経理を修正した事実を明確に表示することを義務付けることにより、粉飾を防止し、真実の経理の公開を確保しようという趣旨によるものです(大阪地裁平成元年6月29日判決)。

 

 過年度遡及会計基準導入後には、過去の誤謬の訂正は、原則として修正再表示により行われ、会社法上の計算書類において、過年度の累積的影響額を当期首の資産、負債及び純資産の額に反映するとともに、誤謬の内容等を注記することとされました。

 

(注)重要性の判断に基づき、修正再表示しない場合には、損益計算書上、その性質により、営業損益又は営業外損益として計上することが一般的とされています(過年度遡及会計基準65.)ので、これによる場合には従来どおりの「修正の経理」が行われることになります。

 

 

 

2 この修正再表示による処理は、当期首において過年度の収益の過大計上や費用の過少計上(資産の過大計上や負債の過少計上)の修正及びこれに伴う当期首の利益剰余金の修正の結果を表示するものであり、

「前期損益修正損」等により経理した結果と同一の結果を表示するものです。

 

 

 したがって、本件の修正再表示による処理は、当期首において「前期損益修正損」等による経理をしたものと同一視し得るものですから、法人税法第129条の「修正の経理」として取り扱って差し支えありま

せん。