過去の誤謬の訂正(2)

 

 

 当社の内部監査において、前期に建物に係る減損損失(税務上は損金不算入)450が計上漏れとなっていることが判明しました。この減損損失計上漏れは、会計上の誤謬に該当すると判断し、当期首の利益剰余金を450減額する修正再表示を行うこととしました。

 

 

 この場合において、本件建物について当期以後の償却費の計算を行うときに、修正再表示の対象となった450は、法人税法第31条第1項の「償却費として損金経理をした金額」に含まれるものと解してよいですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 過年度遡及会計基準の導入前においては、誤謬が判明した当期において、会計上、減損損失計上漏れ450について、前期損益修正損に計上するという処理が行われるのが一般的でした。そして、税務上は、法人が計上した減損損失の金額のうち損金算入されない金額は「償却費として損金経理をした金額」に含まれることとされていることから(法人税基本通達7-5-1(5)(注))、その450について別表四で加算(留保)し、別表五(一)の当期増に減価償却超過額として記載するといった申告調整が行われていました。

 

 

 

 

 過年度遡及会計基準による修正再表示の結果のみを見ると、減損損失計上漏れ450が当期首の建物の帳簿価額から直接減額されて表示されるから、その減損損失計上漏れ450は法人税法第31条第1項の「当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額」には含まれないのではないかというものです(仮に含まれないと解した場合には、当期以後の各事業年度において、建物の減損損失の否認額450を対象とした減価償却は、税務上は認められないことになります。)。

 

 

 

 

 

 

 この点、過年度遡及会計基準における「修正再表示」とは、「過去の財務諸表における誤謬の訂正を財務諸表に反映すること」(過年度遡及会計基準4.(ID)とされ、また会社計算規則上、「修正再表示」に相当する概念として設けられた「誤謬の訂正」とは、「当該事業年度より前の事業年度に係る計算書類又は連結計算書類における誤りを訂正したと仮定して計算書類又は連結計算書類を作成すること」とされています(会社計算規則2③六十四)。

 

 

 

 

 本件の修正再表示の処理では、当期首において、前期末の資産、負債及び純資産残高に対し、次の①及び②の修正の結果を反映させ、遡及処理後の当期首の資産、負債及び純資産残高を算出することになります。

 

 

 

 

①前期末における減損損失の計上漏れ(建物の過大計上)の修正

 

 

減損損失450/建物450

 

 

②①の修正に伴う当期首の利益剰余金の修正

 

利益剰余金450/減損損失450

 

 

 

 このように修正再表示は、上記の①及び②の修正結果を表示するものであること、言い換えれば、損金経理をしたのと同一の結果を表示するものです。

 

したがって、修正再表示の処理は、当期首において損金経理をしたものと同一視し得るものですから、減損損失の否認額450は、「償却費として損金経理をした金額」に含まれるものとして差し支えありません。