粉飾決算の修正経理に伴う減額更正の期間制限(1)

 

 原告は、本件事業年度における資産整理益を一億三二〇三万六四四三円と申告していたが、この金額は、土地売却益等からなる資産処分益一〇億七五〇二万二二八九円から整理特別損失九億四二九八万五八四六円を差し引いたものであつた。

 

 ところで右整理特別損失のうち九億三七七七万五八四六円は、過去の事業年度において事実を仮装して経理したところに基づく受取手形、売掛金、たな卸資産等の過大計上及び支払手形、買掛金、預り金等を過少計上していた金額を当期において修正の経理をしたというものであつた。

 

 

 

 

 

 原告は、木材等の卸販売を業とする会社であるが、昭和五三年八月一日から昭和五四年七月三一日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)分の法人税について、所得金額七三四七万四五一一円、納付すべき税額三二六六万〇九〇〇円との確定申告をした。

 

 被告は、昭和五六年七月七日、原告に対し、所得金額を二億五八一九万九三八一円、納付すべき税額を一億〇〇六〇万六六〇〇円と更正(以下「本件更正処分」という。)するとともに、過少申告加算税として三三二万八七〇〇円の賦課決定をし、重加算税として四一万一〇〇〇円の賦課決定をした。

 

 

 原告は、右各処分に対し審査請求をしたところ、国税不服審判所長は、昭和五九年四月二五日、本件更正処分に対する審査請求を棄却し、右重加算税賦課決定を取消したうえ、右過少申告加算税賦課決定については、その税額を三三九万七二〇〇円と変更(以下変更後の過少申告加算税賦課決定を「本件賦課処分」という。)する旨の裁決をした。

 

 

 

 原告は、仮装の経理方法の結果、申告していなかつた欠損金額として、昭和四九年七月期の八九八一万七一一三円及び昭和五〇年七月期の五二九九万一〇〇四円の合計一億四二八〇万八一一七円の欠損をも、本件事業年度において整理特別損失勘定で損金の額に計上していた。

 

 

 

 

 

 原告は、本件事業年度の確定申告に際しては、昭和四九年七月期から昭和五三年七月期までの各事業年度の過大申告分を本件事業年度の整理特別損失として一括修正経理をなし、過年度において発生した欠損金についてその詳細な説明を申告書の付属書類に具体的に記載して提出したが、

 

 その後昭和五四年一〇月ころ、被告に対し、昭和四九年七月期から昭和五三年七月期までの各事業年度分について真実に応じた更正をするよう要請し、自主申告制度の建前から自ら調査し、その報告をする旨述べたところ、被告はこれを了承した。

 

 

 昭和五四年の暮には、昭和四九年七月期、昭和五〇年七月期の実態の究明が完了し、原告は、被告に対し、この旨を申し述べたが、被告は昭和四九年七月期から昭和五三年七月期までの全体の調査終了を待つて一連の事案として更正するということであつた。

 

 

 原告は、調査結果について再三被告から報告の督促を受けたが、なかなか結論が得られず報告ができなかつたが、昭和五五年九月二〇日に、原告は被告に対し調査した書類を提出した。

 

 

 その後被告において確認調査に手間取り、昭和五六年七月七日に基本的には原告提出の調査結果によつて、昭和五一年七月期から昭和五三年七月期までの減額更正が行われたのであるが、昭和四九年七月期及び昭和五〇年七月期の更正は、国税通則法七〇条二項の五年の除斥期間に抵触するのでできないということであつた。