不服申立手続を経ない国家賠償請求(2)

 

 

 第1審(名古屋地方裁判所平成19年(ワ)第1317号、平成20年7月9日民事第4部判決)は請求を棄却しました。

 

 

 以下判示事項です。

 

 

 

 

 

 

 争点(1)(課税処分固有の不服申立手続を経ずに,課税処分の違法を理由とする国家賠償を請求することが許されるか)について

 

 

 固定資産税等の賦課決定に対しては,一定期間内に審査請求等を行うことができ,これに対する裁決を経た後に,処分取消の訴えを提起することができることとされている

 

 

 法は,固定資産税等の課税処分や登録価格に対する不服申立てについて期間の遵守を求め,当該期間を徒過した場合には,処分等の内容に過誤があることを理由として,当該処分等の効力を争うことはできないこととしているのである

 

 

 行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては,あらかじめ当該行政処分につき取消判決を得なければならないものではないが

 

 

 行政処分は,たとえ違法であっても,その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効ならしめるものと認めるべき場合を除いては,適法に取り消されない限り完全にその効力を有するものと解される

 

 もっとも,行政処分の無効確認の訴えは,出訴期間の制限なく許容されていること(行政事件訴訟法36条),前述のとおり,行政処分の違法が当該処分を当然無効ならしめるものと認めるべき場合については当該行政処分の公定力に配慮する必要もないと解されることからすれば,課税処分が当然に無効である場合にまで,国家賠償請求を否定することは相当でない。

 

 

 さらに,登録価格について不服がある場合に当たるため,地方税法434条2項所定の争訟方法の制限が課される場合であっても,価格決定に無効とすべき瑕疵がある場合に,価格決定の無効又は当該価格を基礎とする課税処分の無効を理由とする争訟は許されないものすることも妥当でない。

 

 したがって,固定資産の価格決定又はこれを前提とする固定資産税等の課税処分の違法が,これらの処分を当然無効ならしめるものではない場合には,当該処分が適法に取り消されない限り,同処分の違法を理由とし,過納金相当額を損害とする国家賠償法に基づく損害賠償請求は許されないものと解するのが相当である。