本件は,建物(以下「本件倉庫」という。)を所有する原告が,本件倉庫に係る固定資産税及び都市計画税(以下両者を併せて「固定資産税等」という。)について,
名古屋市港区長の賦課決定に従い納付したが,
昭和62年度分から平成13年度分までの当該課税処分には,冷凍倉庫用の経年減点補正率を適用しなかった違法があり,
これによって原告は損害を被ったと主張して,
被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,昭和62年度分から平成13年度分までの固定資産税等の過納金相当額等及びこれに対する固定資産税等の各年度第4期納期限の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
ア 原告は,倉庫業(物品の冷蔵及びその保管)等を営む法人である(甲9号証,弁論の全趣旨)。
イ 本件倉庫は,昭和54年に建築されて以降現在に至るまで,原告が所有している。
ウ 名古屋市港区長(以下「港区長」という。)は,昭和55年度以降,別表1の「評価額」欄記載のとお
り,本件倉庫の価格を決定した(以下「本件各価格決定」という。)上,昭和62年度から平成13年度
まで,原告に対し,別表2の「実際の評価額及び税額」欄中「税額」欄記載のとおり,本件倉庫の固定資
産税等の賦課決定を行った(以下「本件各課税処分」といい,本件各価格決定と併せて「本件各課税処分
等」という。)。なお,港区長は,本件倉庫の価格を決定するに際し,経年減点補正率について,本件基
準表7(1)のうち,「鉄骨造(骨格材の肉厚が4mmを越えるもの)」を適用して算出した。
エ 原告は,被告に対し,遅くとも,昭和62年度から平成13年度までの各年度の第4期納期限である翌
年2月末日までに,ウの賦課決定に係る税額の固定資産税等を納付した。
オ 平成18年度の地方税法416条1項に基づく土地価格等縦覧帳簿及び家屋価格等縦覧帳簿等の縦覧期
間中である同年4月上旬ころ,固定資産税の納税義務者から,被告に対し,倉庫の評価についての疑義が
提起された(争いのない事実,乙24号証)。
カ 同年5月16日,港区役所区民生活部税務課家屋係の職員が,市内一斉調査の一環として,本件倉庫に
赴き,本件基準表7の適用に関する確認作業を行った。
キ 同年5月26日,港区長は,地方税法417条1項に基づき,本件倉庫の平成14年度から平成18年
度までの価格を修正し,固定資産課税台帳に登録した上で,同法420条に基づき,本件倉庫の固定資産
税等の減額更正をした(争いのない事実,甲4号証,甲5号証の1ないし4)。なお,当該価格の修正の
際,港区長は,経年減点補正率について,本件基準表7(2)のうち「鉄骨造(骨格材の肉厚が4mmを
越えるもの)」を適用して算出した。
ク 同年5月29日,港区長は,原告に対し,キの修正された価格を固定資産課税台帳に登録した旨の通知
等を行った。その後,原告は,被告から,平成14年度から平成17年度までの固定資産税等について,
既納付の固定資産税等の税額と,キの減額更正後の固定資産税等の税額との差額の還付を受けた。
ケ 同年9月15日,被告財務局長は,家屋の評価事務の実施に関する基本的事項を定めた「家屋評価事務
取扱要領(昭和54年3月7日付け54財固第11号各区長あて財務局長通達)」(以下「取扱要領」と
いう。)について,非木造家屋の経年減点補正率算定に関し,本件基準表7(2)(3)の適用に当たっ
て留意すべき点を加える旨の改正を行い,各区長に通知した(乙12号証。以下「本件通達」とい
う。)。
コ 原告は,平成19年3月23日の本訴提起に至るまで,本件倉庫の登録価格又は本件各課税処分等に関
して,各争訟方法に及んだことはない(弁論の全趣旨)。
争点は以下の通りでした。
(1)課税処分固有の不服申立手続を経ずに,課税処分の違法を理由とする国家賠償を請求することが許され
るか
(2)本件各課税処分に国家賠償法上の違法性があるか
(3)本件各課税処分に国家賠償法上の過失があるか
(4)消滅時効