磐梯観光事件(4)

 

 

 

 控訴審も棄却されました。本件は法人をタックスシェルターとした、所得の変更による租税回避事例であることが、判決理由中でわかります。

 

 

 

 

 

 

 大森国茂は、

 

 昭和四一年ころ不動産業を営む会社として設立された

 

 東京信販コーポ保証株式会社の登記簿上は代表取締役、事実上常務取締役に就任してその営業活動に従事し、

 

 約二年間勤務したのち退職給与として二〇〇〇万円の給付を受けて辞任し、

 

 新たに、加藤恵一を代表者として、

 

 不動産業を目的とする東京信販コーポ株式会社を設立して常務取締役に就任し、

 

 約一年を経過したのち同会社が倒産したため再び前記東京信販コーポ保証株式会社(当時磐梯電鉄不動産株式会社と商号を変更していた)の常務取締役に復帰して営業活動に従事し,

 

 一年余を経た

 

 昭和四六年一〇月ころ、

 

 新会社である控訴人を設立するために辞任し、

 

 その際退職給与金を要求して三五〇〇万円の給付を受けたこと、

 

 

 大森保も、大森国茂とともに、

 

 前記東京信販コーポ保証株式会社

 

 東京信販コーポ株式会社

 

 磐梯電鉄不動産株式会社を順次転職し、

 

 前二社は従業員として、

 

 磐梯電鉄不動産株式会社は役員として営業活動に従事したが、

 

 磐梯電鉄不動産株式会社の役員を辞任した際には、退職給与として五〇〇万円の給付を受けたこと、

 

 同会社では、大森国茂、大森保に対し退職給与名義で給付した金員は、

 

 実質は利益の分配であるとの認識から、経理上は、役員の退職給与としての処理をせず、税務手続上もその扱いをしなかったこと、

 

 大森保らは、控訴人から独立した方が利益が大きいとの認識から新会社設立を企図し、控訴人の役員を辞任して磐光開発株式会社を設立したが、

 

 控訴人代表者大森国茂との間で、特段に意見の対立があったわけでもなく、右会社設立後も、控訴人との間で、控訴人所有の不動産を、手数料を定めたうえその販売に当っていたことの各事実が認められ、

 

 右認定に反する証拠はない。

 

 右事実関係のもとにおいては、控訴会社の設立は、控訴人が主張するように、五年間にも及ぶ長期間において、特段の準備を尽してなされたものとは到底認め難いばかりでなく、

 

 

 不動産の売買により、短期間に多額の収益とその分配を企図して離合集散が繰り返され、控訴会社の設立にも右一連の離合集散のからんでいることが窺われる。