第1審は請求棄却です。その理由は以下の通りでした。
法人税法第三六条は、
役員に対する退職給与が利益処分たる性格をもつことが多いため、一定の基準以下の部分は必要経費としてその損金算入を認めるが、一定の基準を超える部分は利益処分としてその損金算入を認めないというところにあると解される。
相当性の判断にあたつて原告と同業種、類似規模の法人を抽出し、その功績倍率を基準とすることは、前記法令の規定の趣旨に合致し合理的であるというべきである。
抽出された七法人の期末総資産額及び売上金額を原告のそれと比較すると前者は〇・六倍(A社)ないし一〇・八倍(G社)、後者は〇・四倍(F社)ないし一一・八倍(G社)であつて、ばらつきが大きいものの、
これらの金額と功績倍率の大小との間には顕著な相関関係は見出し難いのであり、
従つて少くとも右比較法人の功績倍率の最高値を基準として退職給与金額の相当性を判断する限りにおいては右選定基準の不十分さの故に右判断の合理性が失われるものではない。
現行 法人税法 第34条 役員給与の損金不算入
内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与及び第54条第1項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する新株予約権によるもの並びにこれら以外のもので使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの並びに第3項の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。もの(他の業務執行役員の全てに対して次に掲げる要件を満たす利益連動給与を支給する場合に限る。)
(各号略)
2 内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるものを除く。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
3 内国法人が、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることによりその役員に対して支給する給与の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
4 前3項に規定する給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益を含むものとする。
5 第1項に規定する使用人としての職務を有する役員とは、役員(社長、理事長その他政令で定めるものを除く。)のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいう。
6 前2項に定めるもののほか、第1項から第3項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
大森ら退職役員の設立前の準備活動によつて原告が設立直後から多額の利益をあげえたとの原告主張事実を認めるべき的確な証拠は存在しないのみならず、
一般に設立直後の法人においては役員の貢献の度合を正確に報酬に反映させることができないため功績倍率が高くなるということを認めるに足る資料は何もないし、
また、退職役員の法人設立前の準備活動は、通常報酬或いは賞与の金額を算定する要素とはなりえても退職給与金額算定の要素とはならないのが通常であると解すべきである