磐梯観光事件(2)

 

 第1審の税務署の答弁

 

 

 

 一般に役員退職金はその役員の職務執行に対する報酬の後払的な性格過去の功労に対する報償としての賞与的な性格とを併有するとみられるところ、右のうち損金算入が認められるのは報酬の後払的な性格を有する部分だけであるというべきである。

 

 けだし、損金経理をした役員退職金のうち適正な額が法人の所得の計算上損金の額に算入されるのは、役員退職金の中に報酬(原則として損金算入、法人税法第三四条参照)の後払的な性格のものが含まれているためであり、役員退職金の賞与的な性格の部分は法人税法上役員賞与(原則として損金不算入、法人税法第三五条参照)と同じ扱いをし、その損金算入を認めるべきではないからである。

 

 

 ところで、原告においては、報酬の後払いとしては最大限原告と各退職役員との間に雇用ないし委任の関係が生じた昭和四六年一一月一五日(原告設立の日)まで遡及して賃金の支払不足額を考慮すれば足りるのであつて、原告の設立前の期間については、各退職役員に対して原告は何ら報酬を支払うべき義務が存在しないのであるから、その期間に対応する退職金を支払わなければならないいわれはないのである。

 

 

 従つて、仮に退職役員が原告設立前に原告にとつて有利な行動をし、原告がその貢献も考慮に入れて退職金額を算定したというのであれば、その部分は賞与的な性格を有するものとして損金の額に算入すべきではない。

 

功績倍率について税務署の答弁

 

 

 功績倍率とは最終報酬月額と勤続年数以外の退職金算定に影響を及ぼす一切の事情の総合評価と考えるべきものであり、

 

 それは退職役員の法人に対する功績の度合を係数化したものであつて、

 

 当該退職役員の収益に対する貢献の度合は、本来既に報酬月額中に折り込まれているのであるから、

 

 功績倍率に係数化される功績の度合とは、役員報酬に包含されていることを考慮してなおかつ退職金算定に当たつて考慮される功績の度合であり、

 

 法人の資本金、総資産価額、売上金額、公表利益金額など営業規模及び経営成績などの不確定な要素を総合したものというべきである