上野事件(4)

 

 

 控訴審では原判決は取り消されました。判示事項は以下の通りでした。

 

 

 

 

 

 取消訴訟の確定判決によって取り消された行政処分の効果は,

 

 特段の規定のない限り,

 

 遡及して否定され,当該行政処分は,当初からなかった状態が回復される。

 

 この取消訴訟の原状回復機能はすべての取消訴訟に共通する最も重要な機能である。

 

 また,取消しの遡及効(民法121条)の原則とも整合する。

 

 被控訴人は,原状回復は取消判決の拘束力によって生ずるものであり,形成力によるものではないとして,取消判決の遡及効を否定するが,異説であって採用できない。

 

 

 別件所得税更正処分も,同処分の取消判決が確定したことによって,当初からなかったことになるため,

 

 判決により取り消された範囲においてAが納めた税金が還付され(国税通則法56条),

 

 Aが納税した日を基準時として計算した日数に応じて法定の利率を乗じた還付加算金が支払われるのである(同法58条1項)。

 

 これは,訴訟係属中に相続があった場合でも変わりはない。

 

 すなわち,別件所得税更正処分の取消判決が確定したことにより,Aが別件所得税更正処分に従い納税した日に遡って本件過納金の還付請求権が発生していたことになる。

 

 別件所得税更正処分の取消判決の遡及効を制限する特段の規定も存在しない。

 

 

 国税通則法74条1項は,還付金等に係る国に対する請求権の消滅時効の起算日を「その請求をすることができる日」と定めており,本件については,当該日は別件所得税更正処分の取消判決の確定日となり,本件過納金を納入した日と異なるが,これは行政処分の公定力の効果によるものであって,前記判断と何ら矛盾するものではない。