原告の請求は棄却されました。その主な理由は以下の通りでした。
争点1について
法人に対する贈与等においては、譲渡者についてみなし譲渡所得課税が行われ、譲渡所得課税の繰り延べはなく、法人が無償で譲り受けた資産に係る受贈益は益金に算入され(法人税法二二条二項)、後に当該資産を他に譲渡した段階においては、右受贈益に相当する額は当該譲渡収益に係る譲渡原価として損金に算入されることになる。
そして、法人格なき社団は、所得税法においては同法四条により法人とみなされるから、個人から法人格なき社団に対する贈与等はみなし譲渡所得課税の対象となると解すべきことになる。
争点2について
措置法は所得税、法人税、相続税、贈与税及びその他国税についての特例を規定するものであり(措置法一条)、
右各国税に関する法律における用語の意義を措置法において統一的に解釈することはできないことから、
各国税について必要な定義規定を設けることとし、
所得税法の特例を定める第二章における用語の意義については、所得税法二条の定義規定とは独立して、措置法自体において定義規定を設けている(措置法二条一項)のである。
したがって、右のような措置法の性格及び措置法における用語の定義の仕方に鑑み、措置法第二章は、所得税法の特例を定めるものではあるが、
そこでの用語の意義は、所得税法におけるそれと必然的に一致するというものではなく、措置法の規定に即して解釈すべきものである。
そして、措置法四〇条一項が規定する公益法人等は、同条項上、「法人」であることとされており、
措置法には、所得税法四条のように、人格のない所団等を法人とみなして措置法を適用する旨の規定は存しないのであるから、
措置法四〇条一項の文理に照らして、亡甲から原告に対する本件土地等の遺贈が効力を生じた平成三年三月二〇日当時、未だ、法人格なき社団であった原告が、措置法四〇条一項に規定する公益法人等に該当するものとはいうことはできない。
争点3について
包括遺贈とは、遺言者が、包括の名義で、その財産の全部又は一部を処分すること(民法九六四条)であり、包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する(民法九九〇条)。
「特定財産を除く相続財産(全部)」という形で範囲を示された財産の遺贈であっても、
それが積極、消極財産を包括して承継させる趣旨のものであるときは、
相続分に対応すべき割合が明示されていないとしても、包括遺贈に該当するものと解するのが相当である。
争点に対する判断中、特に争点3については遺言書作成時から執行における弁護士の不手際が強調されており、条文等の的確な判断によれば、当該課税を回避できたと想定される。
判断中、各税法の「人格のない社団等」をめぐる課税について文理解釈は相当である。しかし、当該学習館にかかるキャピタルゲインについては投資の継続性が認められ、実現した利得ではなく、当該利得に担税力はないと、筆者は考える。