争点2
本件土地等の遺贈がみなし譲渡所得課税の対象となる場合、措置法四〇条一項の規定により非課税となるか否か、について。
原告の主張
本件土地等の遺贈がみなし譲渡所得課税の対象になるとしても、
公益法人等に対する財産の遺贈に関するみなし譲渡所得課税の適用については、
当該財産の遺贈がなかったものとする措置法四〇条一項が適用されると解すべきであり、
政党の行う事業が同条項適用の要件である「公益の増進に著しく寄与すること」を満たすことは、政治資金規正法三条に規定する目的のために政党が行う事業がそれに該当する旨の国税庁通達(「贈与税の非課税財産(公益を目的とする事業の用に供する財産に関する部分)及び公益法人に対して財産の贈与等があった場合の取扱いについて」(昭和三九年直審(資)二四)第1、2(1)リ及び相続税法基本通達21の3―9(2))が認めるところであるから、国税庁長官の承認手続をまつまでもなく、当然に非課税とされるべきものである。
所得税法五九条一項の適用に関しては「法人」の中に「法人格なき社団」を含めながら、
同条項の適用に関する措置法四〇条においては「法人」の中に「法人格なき社団」を含まないとすることは恣意的であり、失当である。
措置法には、「法人格なき社団」の除外を明記した規定はなく、またこれを除外すべき合理的理由もない。
また、租税法の通則を定めた基本法たる通則法は、
「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの(人格のない社団等)は、法人とみなして、この法律を適用する」と規定している(通則法三条)のであるから、
個別税法にこれと異なる規定がない限りは、「法人」の概念に「人格のない社団等」が含まれると解するのが自然であり、
所得税法四条は、このことを確認する趣旨にほかならない。
被告の主張
措置法四〇条一項の文理上、公益法人等には人格のない社団は含まれず、
措置法には、所得税法四条、法人税法三条のような人格のない社団を法人とみなす旨の一般的なみなし規定はなく、
むしろ、第三章法人税法の特例中の措置法四二条の四第一項に「青色申告書を提出する法人(人格のない社団等を含む。以下この章において同じ。)」というような個別的な規定を置いていることから考えると、
措置法における「法人」には、特段の規定がない限り、人格のない社団は含まれないと解すべきである。
所得税法四条の定義規定を措置法中の所得税法の特例に関する規定にそのまま準用することができないことは、
措置法二条において措置法で使用する各用語の意義を各章ごとに規定していることから明らかである。
さらに、通則法三条、四条についても、その規定の文言上、適用範囲を通則法に限定しており、
措置法を適用するに際し、右の通則法の各規定を適用することができないことも明らかである。