課税処分取消請求事件東京地裁平八(行ウ)109号 (その2)

 

 

 争点 1 本件土地等の遺贈がみなし譲渡所得課税の対象となるか否か。

 

 

 

 

 

 原告の法的根拠

 

 

 政党に対する遺贈については、相続税法一二条一項三号の適用により、相続税の課税価格に算入されず、相続税が課税されないことは明らかであり、同法二一条の三第一項三号は、贈与について、同様の規定をしている。

 

 

 政党に対する個人の政治献金については、措置法四一条の一六の規定により、所得税法七八条の寄付金控除の対象とすることを定めている。

 

 

 

 

相続税法 第12条 

 

 

 

次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。

 

 

 

三 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが相続又は遺贈により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの

 

 

相続税法 第21条の3 

 

 

 

次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。

 

三 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが贈与により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

被告の答弁

 

 

 

 

 措置法四一条の一六の規定は、政治資金規正法三二条の二に基づき設けられたものであるが、

 

すべての政治献金を所得税課税の対象外としているわけではなく、

 

一定の要件を充足した場合に、政党への寄付金を所得税法七八条二項の「特定寄付金」とみなして、

 

一定の限度で寄付金控除を認めているにすぎない。

 

 これも、政党への政治献金に対する課税をいかに取り扱うかについての立法政策の現われであり、かかる明文規定の範囲を超えて、

 

遺贈による政治献金を一般的に所得税課税の対象外とすることは許されない。

 

 

 原告の指摘する相続税、贈与税の非課税措置は、それぞれ、贈与等を受ける側の非課税措置を規定するものであって、譲渡する側に対する課税であるみなし譲渡所得課税に関してまで非課税の取扱いが認められるべきであるとすることはできない。