課税処分取消請求事件東京地裁平八(行ウ)109号 (その1)

 

 

 原告は、大正一一年に創立された政党であり、

 

 政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律(平成六年法律第一〇六号。平成七年一月一日施行。以下「政党法人格付与法」という。)に基づき、法人格を取得した(平成七年四月一二日登記)が、

 

 それ以前は法人格なき社団として、所得税法四条により、同法の規定の適用に当たっては、法人とみなされていたものである。

 

 

 

 亡甲は、戦前の原告の中央幹部であり現在もなお原告内部において原告の歴史上重要な人物の一人として位置付けられている乙(昭和九年二月一九日死亡。)の妻であり、

 

 土地、建物及び借地権(以下「本件各不動産」と総称する。)を有し、建物をN(以下「学習館」という。)とし、その運営を原告に任せていたものであるが、平成三年三月二〇日死亡した。

 

 

 

 

 乙は、亡甲の妹であり、亡甲の相続人の一人であるが、建物(以下「乙所有建物」という。)を所有し、そこに居住していたものである。

 

 

 

 

「遺言書」は以下の通りであった。

 

 

 私(甲。以下同じ。)は遺産の処理についていろいろ考えましたが、私がのこすN学習館は、是非とも将来永く存続させたいと希望します。そのために右N学習館の運営を原告に任せたいと考え、私は左記のとおり遺言をします。

       

 

 

 

一、私所有の土地のうち現在妹名儀の建物の敷地部分とそこから公道までの二メートル幅の通路部分につい

  ては妹(乙。以下同じ。)に譲ります。

 

二、第一項を除く私の所有のすべての不動産及びN学習館におさめられている書籍や夫の手紙などは、すべ

 て原告に寄付します。

  なお、妹が第一項の土地を実質的に取得できるように原告において十分配慮されるようお願いします。

 

三、この遺言の遺言執行者として△△△△氏を指定します。

 

  一九九〇年十二月二十四日  以下略

 

 

 

 

 

 本件遺言書については、平成三年七月二九日、東京家庭裁判所において、検認が行われている(同裁判所平成三年(家)第六二五二号遺言書検認審判事件)。

 

 

 被告税務署長は、

 

 亡甲(平成三年三月二〇日死亡。以下「亡甲」という。)から

 

 原告に対する遺贈を

 

 所得税法五九条一項一号に規定する資産の譲渡みなし

 

 かつ、

 

 右遺贈は包括遺贈であるとして、

 

 国税通則法(以下「通則法」という。)五条に基づき、

 

 原告に対して平成六年一〇月七日付けでした亡塩澤の平成三年分の所得税に係る決定及び無申告加算税賦課決定処分を行った。

 

 

 

 

所得税法 第59条 贈与等の場合の譲渡所得等の特例

  

次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。

 

 

一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)

二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)

 

 

 

国税通則法 第5条 相続による国税の納付義務の承継

  

相続(包括遺贈を含む。以下同じ。)があつた場合には、

 

相続人(包括受遺者を含む。以下同じ。)又は民法第951条の法人は、

 

その被相続人(包括遺贈者を含む。以下同じ。)に課されるべき、

 

又はその被相続人が納付し、若しくは徴収されるべき国税を納める義務を承継する。

 

この場合において、相続人が限定承認をしたときは、その相続人は、相続によつて得た財産の限度においてのみその国税を納付する責めに任ずる。

 

 

2 前項前段の場合において、相続人が2人以上あるときは、各相続人が同項前段の規定により承継する国税の額は、同項の国税の額を民法第900条から第902条まで(法定相続分・代襲相続人の相続分・遺言による相続分の指定)の規定によるその相続分によりあん分して計算した額とする。

 

3 前項の場合において、相続人のうちに相続によつて得た財産の価額が同項の規定により計算した国税の額をこえる者があるときは、その相続人は、そのこえる価額を限度として、他の相続人が前2項の規定により承継する国税を納付する責めに任ずる。