国際課税原則の見直し(2)

 

 「総合主義」「帰属主義」について、検討します。

 

 

 

 

 

 現在の日本の非居住者・外国法人課税ルールの大枠は1962 年に整備された。

 

 恒久的施設の定義はOECD モデル租税条約(完成は1963 年)を模倣したものであるが、ソースルール(所得源泉)は1966 年以前のアメリカ法の全所得主義(総合主義とも呼ばれる)を模倣したものである。

 

 他方、OECD モデル及びそれに依拠する日本の実際の租税条約は、概ね帰属所得主義(帰属主義とも呼ばれる)を採用している。

 

 

 所得税法164(法人税法141)条1 項1 号(4)のいわゆる1 号PE を非居住者(外国法人含む)が日本国内に有している場合、日本での課税対象所得は当該PE に帰属する所得に限定されず「すべての国内源泉所得」となる。

 

 

 これを全所得主義と呼ぶ。

 

 国内源泉所得のうち当該PEに帰属しない所得も当該PE の存在によって課税対象に吸引されてしまう。

 

 

 

 OECD モデル租税条約7 条1 項は、非居住者が源泉地国内にPE を有している場合に、当該PE に帰属する所得についてのみ源泉地国の課税権を認めている。

 

 これを帰属所得主義と呼ぶ。

 

 

 

 外国法人が東証で日本所在のサーバーを通じて証券取引をすると、当該サーバーがPE 認定される可能性があり、当該外国法人が日本と条約を締結していない国(タックスヘイヴン等)の居住者である場合には日本国内法の全所得主義が適用される可能性がある。

 

 

 

 

 例えば外国法人が日本に子会社を作り、当該子会社がサーバーを使うという法形式を採用すれば、ありうるとしてもせいぜい代理人PE 規定の適用にとどまり、代理人PE 規定の適用自体も回避の余地が多い上に、仮に代理人PE 規定が適用されるとしても、所得税法164 条1 項1 号と3 号の課税対象所得の範囲を見比べると、force of attraction は完全にではないが概ね回避できる。

 

 

 

 全所得主義が用意周到な納税者相手には租税回避対策として機能しない可能性がある一方で、普通の投資家を日本から遠ざける効果を持つ可能性がある

 

 という問題点が指摘されている。

 

 

『税大ジャーナル』 20 2013. 1、「全所得主義(総合主義)から帰属所得主義(帰属主義)への移行を巡る背景」、浅妻 章如著