個人の決算(20)

 

 不動産賃貸業を営む個人が、賃貸アパートの屋上に太陽光発電設備を設置し、これにより発電した電力をその賃貸アパートの共用部分で使用し、その余剰電力を固定価格買取制度に基づき電力会社に売却している場合、この余剰電力の売却収入の所得区分はどのように取り扱われるのでしょうか。

 

 

 

 本件の太陽光発電設備による余剰電力の売却収入は、不動産所得に係る収入金額に算入します。

 

 ところで、賃貸アパートの共用部分で使用する電気料金は、不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されるものです。

 

 太陽光発電設備により発電された電力は、賃貸アパートの共用部分に使用されるため、太陽光発電設備を設置することにより共用部分の電気料金は減少し、その分不動産所得の金額の計算上必要経費に算入される金額も減少することになります。

 

 

 このように、太陽光発電設備による発電が不動産所得の金額について増減させるものであることを踏まえると、その余剰電力の売却収入も不動産所得に係る収入金額に算入し、その所得金額を計算するのが相当と解されます。

 

 なお、エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除(租税特別措置法第10条の2の2)は、事業所得の金額又は事業所得の金額に係る所得税額の計算における特例ですので、不動産所得を生ずべき資産である賃貸アパートに太陽光発電設備を設置し、その業務(事業)の用に供している場合には、これらの特例の適用を受けることはできません。

 

 不動産賃貸業を行う個人が、賃貸不動産に太陽光発電設備を設置し、全量売電を行っている場合の売電収入は、上記のような不動産所得との関連性が認められないことから、それが事業として行われている場合を除き、雑所得に該当すると考えられます。