個人の決算(2)

 

 既に記帳されている収入や経費の中には、例えば、前受金や前払経費のようにその年分の収入金額や必要経費にならないものがありますし、また、まだ記帳されていないものであっても、例えば、未収入金や未払経費のようにその年分の収入金額や必要経費になるものがあります。

 

 そこで、このようなものがあるかどうかを調べて、帳簿を正しく整理する必要があります。

 

 これがいわゆる決算整理と呼ばれます。

 

 一番大切なのが売上で、これは以下のように整理します。

 

 収入金額は、その年中に収入することの確定した金額ですが、次のような点に注意して整理します。

 

 未収入金など

 

 掛け売りなどのように、まだ実際に代金を受け取っていない売上げでもその年中に売り上げたものは、全てその年分の収入金額になります。

 

 したがって、掛け売りをその都度記帳しないで、入金の際に売上げとして記帳することとしている場合には、12月31日までにまだ入金していない掛け売りの金額を調べて収入金額に追加します。

 

 

(注) 前年末に掛け売りとして収入金額に含めた金額を入金の際に売上げとして記帳している場合には、その金額はその年分の売上げから除外します。

 

 前受金など

 

 まだ商品などを売り上げていないのに受け取っている前受金などは、その年分の収入金額にはなりませんから、もし収入金額に含めて記帳している場合には、その金額を除外します。

 

 

 現物収入

 

 販売した商品の代金などを金銭以外の品物などで受け取った場合は、その品物などの時価によって収入金額を計算します。

 このような現物収入をまだ記帳していない場合には、追加記載します。

 

 

家事消費した商品など

 

 商品などの棚卸資産を家事のために消費したり、贈与したような場合も収入金額になります。

 この場合の収入金額は、原則として、その商品などの通常の販売価額によりますが、仕入価額(仕入価額が通常の販売価額のおおむね70%の金額よりも低いときは、通常の販売価額の70%の金額)で収入金額を計算しても差し支えありません。

 

 家事のために消費したものや贈与したものをまだ記帳していない場合には、追加記載します。

 

 

損害保険金、補償金など

 

 ①商品などの棚卸資産について受け取る保険金、損害賠償金、

 ②公共事業の施行などに伴う休業などの補償として受け取る補償金など、事業の収入に代わる性質をもっ

  ているものは、収入金額になります。

 

   しかし、心身に損害を加えられたため事業に従事することができなかった場合に、その間の収益の補

  償として受け取る慰謝料その他の損害賠償金は課税されませんから収入金額には含めません。

 

 

雑収入

 

 空箱、作業くずなどの売却代金、仕入割引、リべート、取引先や使用人に対して事業の遂行上貸し付けた貸付金の利子、使用人の寄宿舎の使用料、買掛金の免除益など事業に伴って生ずる収入は、雑収入として事業所得の収入金額になります。

 なお、少額な雑収入については、収入することの確定した年分の収入金額とはしないで、実際に受け取った年分の収入金額にしても差し支えありません。

 

(注) この方法による場合でも、その年中に入金した金額を前年分以前において既に未収入金として整理

   し、収入金額として記帳しているときは、その金額はその年分の収入金額にはなりません。

 

 

減価償却資産の売却代金

 

 機械装置や器具備品などの減価償却資産の売却代金は、原則として、譲渡所得の収入金額になり、事業所得の収入金額にはなりません。

 

 しかし、次のようなものの売却代金は、事業所得の収入金額になります。

 

① 取得価額が10 万円未満のもの(その事業にとって基本的に重要なものを除きます。)や使用可能期間

 が1年未満のもの

 

② 取得価額が10 万円以上20 万円未満の減価償却資産で一括償却資産として必要経費にすることとしたも

 の(その事業にとって基本的に重要なものを除きます。)

 

③ 貸衣装業の貸衣装のように反復継続して売却することがその事業の性質上通常であるもの

 

④ 既にスクラップ化したもの