馬券裁判(12)

 

 

所得税法第34条では、

 

 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。

 

とされ、

 

第27条 で、

 

 事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。

 

 

所得税法施行令 第63条 事業の範囲として、

 

 法第27条第1項(事業所得)に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業(不動産の貸付業又は船舶若しくは航空機の貸付業に該当するものを除く。)とする。

 

一 農業

二 林業及び狩猟業

三 漁業及び水産養殖業

四 鉱業(土石採取業を含む。)

五 建設業

六 製造業

七 卸売業及び小売業(飲食店業及び料理店業を含む。)

八 金融業及び保険業

九 不動産業

十 運輸通信業(倉庫業を含む。)

十一 医療保健業、著述業その他のサービス業

十二 前各号に掲げるもののほか、対価を得て継続的に行なう事業

 

とされる。

 

 

 

 

 事業所得は、自己の計算と危険において営利・継続的に行う経済活動による所得と解されているが、

 

 

 対価を得て継続的に行う事業者に該当するか否かについては、明文の規定は存せず。馬券の購入が、所得税法上の事業に該当するか否かは、営利性・有償性の有無、継続性・反覆性の有無は、もちろんのこと、これらに加えて、馬券購入の種類、当該取引におけるその者の関与の程度、取引のための人的・物的設備の有無、資金調達方法、その者が取引に費やした精神的・肉体的労力の程度、その者の職業・職歴及び社会的地位などを綜合して、いわゆる事業としての社会的経済的実体を有するか否かを検討して、一般社会通念に照して判断さるべきである、と解される。(名古屋地方裁判所昭和五一年(行ウ)第三〇号更正処分取消請求事件 同昭和五二年(行ウ)第九号重加算税取消請求事件、一部筆者により加筆修正)

 

 

 

 

 

 本件では、被告人は本件発覚後競馬をやめていること,本件無申告が明るみに出たことによって職を失うなど既に十分な社会的制裁を受けている、との判決理由があることからも、事業所得の該当性はなかったのである。