馬券裁判(8)

 被告人は,特定のレースにおいて特定の買い目を当てることによって利益を出すのではなく,前記のとおり,A-PAT及び本件ソフトを用いることにより,ほぼ全てのレースにおいて無差別に,専ら回収率に着目して過去の競馬データの分析結果から導き出された一定の条件に合致するものとして機械的に選択された馬券を網羅的に購入することで,長期的観点から全体として利益を得ようと考え,実際にもそのような方法により馬券を購入し,現に5年間にわたって毎年多額の利益を得てきた。

 

 

 裁判所は、所得の基礎が所得源泉となり得ない臨時的,不規則的なものの場合,たとえこれが若干連続してもその一時所得としての性質に何ら変わるところはない、とし、

 

 

 一時所得は,一時的かつ偶発的に生じた所得である点にその特色があるといえる。

 

 したがって,所得発生の基盤となる一定の源泉から繰り返し収得されるものは一時所得ではなく

 

 逆にそのような所得源泉を有しない臨時的な所得は一時所得と解するのが相当である。

 

 そして,そのような意味における所得源泉性を認め得るか否かは,当該所得の基礎に源泉性を認めるに足りる程度の継続性,恒常性があるか否かが基準となるものと解するのが相当である、とする。

 

 

 

 所得源泉を1レース毎に考える場合、馬券の購入方法によって勝ち馬券の種類が数種類あっても当該1レースにかかる所得は繰り返し習得され得ないものである。レース個別毎に生じる利得について一時所得内部で損益を通算することはできない。

 とすると、当該所得が一時所得に該当するのかという判断が重要となる。