馬券裁判(5)

 被告人は,平成16年にPAT口座に100万円を入金して以来,追加の入金は一切していない。

 

 前記のとおり,適宜の改変をしつつ本件ソフトを使用して馬券を購入し続けた結果,長期的には収支はプラスになり,平成17年から平成21年までの5年間にわたり,毎年多額の利益を得ていた。

 

 

 

 検察官は,

 

 馬券購入行為が各競走の結果に対して何ら影響力を有するものではなく,

 

 競走の結果も偶然が作用するものであるから,

 

 馬券購入行為と払戻金を生じさせる競走結果との間には因果関係がなく,

 

よって,馬券購入行為は多数回行ったとしてもそれぞれ独立した行為であり,

 

 継続性,恒常性を認めることはできない

 

 として,本件馬券購入行為の払戻金による所得を

 

 「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」と認めることはできないと主張する。

 

 

 

 一時所得の該当性は、具体的には

 

 所得の基礎に源泉性を認めるに足る継続性・恒常性がないこと

 

 一時金として支払われたものであること

 

 給付が抽象的・一般的な労務・役務行為に密接・関連しないものであること

 

 という点にあると考えられる、とされる。(寺内 将浩、『税大論叢』、平成21年6月25日)

 

 

 所得の基礎に源泉性を認めるに足る継続性・恒常性について、

 

 被告人は,PAT口座の残額に応じて,収支の安定を図り,かつ効率よく残高を増やすことができるような金額式を作成した。

 

 そして、パソコンの電源を切らない限り,本件ソフトが自動的にダウンロードするオッズ等の情報を基に,馬券を自動的に購入し続けることができた。

 

 また、被告人は,土日はパソコンをつけたまま外出することが多く,ときには,2週間以上パソコンをつけたままにして自動的に馬券を購入したこともある。

 

 なお,被告人は,半年ほど同一のユーザー得点及びユーザー抽出条件で購入した結果,収支がプラスになりそうにないと判断すれば,ユーザー得点及びユーザー抽出条件の設定を適宜見直していた。

 

 また,年末年始のようにまとまった時間がとれる場合にも,ユーザー得点及びユーザー抽出条件の見直しをしていた。