馬券裁判(1)

 

 中央競馬は日本中央競馬会(JRA)が主催する競馬であり,全国に10か所ある競馬場の2ないし3か所において,年間288日開催されている。開催日は,基本的には毎週土曜日と日曜日である。

 

 各競馬場では,他の競馬場で行われている競馬の馬券も購入することができる。

 

 各競馬場では,基本的には1日に12レースが行われ,各レースにおいて最大18頭の馬が出走する。その際,出走する馬には1ないし18のいずれかの馬番号及び1ないし8のいずれかの枠番号が割り当てられており,これらの馬番号及び枠番号を用いて勝馬投票が行われる。

 

 購入された馬券の総額から,約75パーセントが払戻金として的中者に分配される。残りの約25パーセントについては,原則として,約10パーセントが国庫に納付され,約15パーセントが中央競馬の運営に充てられることになる。

 

 

 

 

 

 馬券の購入、払い戻しについて

 

 

 

 はJRAが提供するA-PAT(パソコン,携帯電話及びプッシュホン電話により馬券を購入することができ,利用時の馬券の購入金の支払い及び払戻金の受領等の決済は全て,加入時に開設したA-PAT専用の銀行口座(PAT口座)を通じて行われる。)

 

又は

 

 即PAT(パソコン,携帯電話により馬券を購入することができ,利用時の馬券の購入金額の支払い及び払戻金の受領は全て,加入時に登録した特定の銀行口座を通して行われ,馬券の発売時間帯にも入出金が可能である。)というサービスを利用する方法がある。

 

 

 

 

 

 被告人は,過去約10年分の競馬データを分析して,独自に考え出したユーザー得点及びユーザー抽出条件を設定し,PAT口座の残高に応じた購入金額で馬券を自動購入していた。

 

 

(1)過去の競馬データの分析

 

 被告人は,的中率ではなく回収率に着目し,回収率に影響を与え得るファクターについて,それが回収率と普遍的な傾向が認められるか否かを本件ソフトの有する

 

 

 

 Data-Laboによって提供されている過去10年以上のデータに基づいて,ユーザーが任意に設定した条件に当てはまる買い目を買った場合の購入した買い目の数に対する的中した買い目の数の比率(的中率)及び合計購入金額に対する合計払戻金の比率(回収率)を計算して表示する機能等

 

 

 

 を用いて検証した。

 

 そして,検証の結果,回収率との関係に明確な傾向が見いだせないファクターや,普遍的な傾向が見いだせないファクターについては,ユーザー得点に反映させないようにした。

 

 

 このような行為を休日を利用して数か月繰り返し,前走着順,競走馬の血統,騎手,枠順,性別及び負担重量などの思いつく様々なファクターを検証した結果,最終的に約40のファクターを採用した。