新興国における課税問題(11)

 

 移転価格調査については、重点的に調査を行う企業の類型を定めている国があり、また、ある社が追徴課税を受けた場合には同業他社へ波及することもあります。

 したがって、調査に備えた十分な対策を取ることが必要です。

 

 

中国の場合

 

○ 重点的に調査される企業の類型

 

 「特別納税調整実施弁法(施行)」(国税発【2009】2号第29条)において、移転価格調査で重点的に選定すべき企業は、以下のとおり定められている。

 

【特別納税調整実施弁法(施行)国税発【2009】2号第29条】

 

・ 関連者との取引金額が大きい、あるいは取引類型が多い企業

・ 長期的欠損がある企業、稀少な利益しかない企業、利益の変動が激しい企業

・ 利益水準が同業他社より低い企業

・ 利益水準が負担する機能及びリスクと明らかに対応しない企業

・ タックスヘイブンにある関連者と取引がある企業

・ 規定に従って関連申告を行わない、あるいは同期資料を準備していない企業

・ 独立企業間取引の原則に明らかに合致しないその他の企業

 

 

【ハイテク認定企業に対する調査の強化】

 

 中国税務当局は、ハイテク企業認定管理弁法に基づき認定されるハイテク認定企業に対して、認定時に提出した資料と移転価格同期資料における記載事項に矛盾が無いかについて調査を始めており、現時点ではそれほど多くないが、実際に更正された事例も出ていると言われる。

 

○ 調査対象企業の選定方法

 

 中国の税務当局が調査企業を選定するパターンは、大別して以下の二つと言われる。

 

1.国家税務総局が主導し、特定業種のうちモデルケースとなり得る社や多額の追徴額を見込めるような高い利益を上げている社など、代表的な会社をターゲットにおき、その結果を同じ業種の他企業にも援用していく方法。

 

2.各地方税務当局が一般の税務調査等を通じて対象を特定し、国家税務総局に調査対象案件として妥当かどうかについて了承を得た上で案件化する方法。

 

 また、中国の移転価格調査で最近注目される動きとして、合同調査がある。

 

<合同調査>

 

 国家税務総局が地方税務当局に対して、特定の企業グループや業種(最近は、自動車、不動産、ホテルチェーン、空運代行、製薬、PC、タイヤ業界等)への調査を重点的に行うように指導し、当該業種の数社について、移転価格税制上の問題が内在していないかを検討し、内在している可能性があると判断した場合には、当該業種に対して全国一斉に調査を行うというもの。