新興国における課税問題(9)

 

 租税条約は、二重課税の回避、脱税及び租税回避等への対応を通じ、二国間の健全な投資・経済交流の促進を図ることを目的として締結される条約です。

 

 

二重課税の回避

 

・源泉地国(所得が生ずる国)の課税できる所得の範囲の確定

 

 - 事業所得は、支店等の活動により得た所得のみに課税

 - 投資所得(配当、利子、使用料)は、税率の上限を設定

 

・居住地国における二重課税の排除方法

 

 - 外国税額控除等

 

・税務当局間の相互協議(仲裁を含む)による条約に適合しない課税の解消

 

 

 脱税及び租税回避等への対応

 

・税務当局間の納税者情報(銀行機密を含む)の交換

 

・租税に関する徴収共助

 

 

 新興国では税の還付手続きや租税条約適用手続きが煩雑かつ時間がかかることによって実質的に還付や租税条約の恩典を受けられないケース等が見受けられます。

 

 

【タイ】

 

・ 一度納税されたものについて還付を行うということに対して極めて消極的な姿勢であり、還付請求を行う場合には、その還付理由を問わず、基本的に例外なく税務調査が実施される。還付請求額の妥当性を詳細に検証し、少しでも納得がいかない部分があれば、納税者が立証できるまで還付を止められ、場合によっては還付に全く応じないというケースも見受けられる。

 

 

【ブラジル】

 

・ 州税や市税については還付のシステムがなく、その他の納付に当てる方法(税の相殺)以外の手段がない。

・ 連邦税については還付のシステムは存在するが、還付金を受け取るまでにかなりの日数を要することから(いつまでに還付されるという保証はない)、還付受取り権利額と連邦税のその他の税との相殺を選択する法人が大半となっている。

 

 

【マレーシア】

 

・ 源泉税額等について還付請求を行う場合には、通常監査等が行われ、その監査も複数年度に及ぶことがあるため、非常に大きな負荷となっている。

 

 

【インドネシア】

 

・ 税の還付請求について、期限である1年を超えても還付されない、あるいは、一部還付されるものの全額は還付されないといったケースがある。

・ 法人所得税については、予納制度が採られている。業績が悪化し過大納税になった場合には、企業は還付請求を行うが、還付請求を行うと税務調査が必ず行われると言われる。