新興国における課税問題(8)

 

 恒久的施設(PE,Permanent Establishment)とは、支店や事務所、工場といった事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っている場所のことを指します。

 

 租税条約には、「PEなければ課税なし」という原則があります。すなわち、わが国企業が進出先国で獲得する事業利得について、当該進出先国が課税することができるのを「恒久的施設(PE)を有する場合」に限定しています。

 

 また、そうした場合においても、課税対象となる事業利得は当該わが国企業が得た利得のうち、PEに帰属するものに限るとしています。(租税条約の締結がない国においても通常国内法でPEの範囲が定められています。)

 

 

 新興国では自国の課税権の拡大を目的に、このPEの範囲を拡大解釈する傾向があり、二重課税の問題へとつながる場合があります。

 

 

 

 役務提供に対する PE 認定

 

 ① 出張者に対する PE 認定

 

 【中国】

 

・ 6ヶ月を超えない短期滞在である場合は PE 認定されないことが日中租税条約に定められているが、6ヶ月基準の定義が曖昧で、1ヶ月に1日ずつ滞在し、それが6ヶ月を超えるような場合にまで PE 認定された。

 

 

 ② 出向者に対する PE 認定

 

【中国】

 

・ 通達(国税発[2010]75 号)により、親会社からの出向者が現地子会社の業務をしていれば、PE として認定されないと規定されている。しかしながら、出向社員の給与などを親会社が立て替えている場合に、人的役務の提供としてその対価を回収しているとして出向者が我が国親会社の PE として認定され、営業税の課税対象とされた。また、PE 認定を受け入れなければ納税証明書を発行してもらえず、海外送金させてもらえない。

 

 

 

 

日中租税協定第5条第5項

 

 日本の企業が中国国内において使用人その他の職員を通じてコンサルタントの役務を提供する場合には、このような活動が単一の工事または複数の関連工事について12箇月の間に合計6箇月を超える期間行われるときに限り、日本企業は、中国国内に「恒久的施設」を有するものとされる。

 

 

 

営業税

 

 営業税の課税対象となる事業、又は取引を行っている個人又は法人に対し、営業税が課税されます。中国子会社が日本の親会社に一定の対価を支払う場合に課されます。

 

 

(営業税の税目と税率)

 

 

(課税対象)     (税率)

 

交通運輸業       3%

 

建築業         3%

 

金融保険業       5%

 

郵便通信業       3%

 

文化スポーツ業     3%

 

娯楽業       5~20%

 

サービス業       5%

 

無形資産譲渡      5%

 

不動産販売       5%