新興国における課税問題(7)

 

 PEなければ課税なし、というのが課税権の根拠となるため、新興国では、自国の課税権の拡大を目的に、恒久的施設(PE,Permanent Establishment、)の範囲を拡大解釈する傾向があります。こうしてPEに認定されると、PEに帰属する事業利得が現地で課税対象となります。

 

 

 こうした課税は、それが租税条約に適合するものではない場合にはわが国の外国税額控除の適用を受けることができません。相互協議を申請するという方法も考えられますが、結果として税務当局同士の合意が得られず二重課税が残る可能性もあります。

 

 

 現地子会社・第三者に対する PE 認定

 

【インド】

 

・ 現地子会社が、特段の業務変更も行っておらず、独自に経営判断を行っているにも関わらず、「親会社の

 取次業務を担っているにすぎず、リスクを負っていない」という理由で突然 PE に認定された。

 

・ 我が国本社とは資本関係のない第三者のインド現地法人と契約を締結し、自社の製品を現地で販売しても

 らっていたところ、当該第三者は、我が国本社の契約獲得に貢献しているとして我が国本社の PE と認定

 された。

 

 

 駐在員事務所に対する PE 認定

 

【中国】

 

・ 従来駐在員事務所は「原則免税、営業活動があれば課税」とされてきたが、2010年に発出された通達

 (国税発[2010]18 号)により「原則課税、免税は別途申請」となった。その結果、地方自治体や独立行

 政法人の駐在員事務所までもが原則として PE 認定されることとなり、免税措置を受けるための申請が必

 要になった。

 

・ 商業行為を一切しておらず、本社への連絡業務のみを行っている駐在員事務所が、人件費、場所代などの

 経費に対してみなし利益率を適用され、課税された。

 

 

【インド】

 

・ 従業員数が多いことから、実際には営業活動を行っていないにもかかわらず、実質的に営業活動を行って

 いるとみなされ、駐在員事務所が PE 認定された。

 

 

中国の基本税率

 

(1)企業所得税の税率:25%

 

(2)非居住企業が中国国内において機構、拠点を設置していない場合、又は機構、拠点を設置したが取得し

  た所得がその設置した機構、拠点と実際の関係がない場合、中国国内源泉所得について企業所得税の適用

  税率は20%とされるが、優遇により10%の税率で企業所得税が徴収される。

 

 居住企業とは、法に基づき中国国内において設立され、又は外国(地域)の法律に従い設立されたが実際の管理機構が中国国内にある企業を指す。非居住企業とは、外国(地域)の法律に従い設立され、かつ実際の管理機構が中国国内に存在しないが、中国国内に機構、拠点(原文は「場所」)を設置し、又は中国国内に機構、拠点を設置していないが、中国国内源泉所得を有する企業を指す。