新興国における課税問題(1)

 

 企業が海外の子会社等の関連企業との間での取引価格を操作することにより、一方の所得を他方に移転し、軽課税国における所得を増やすことで納税額を圧縮することが可能となる。

 

 かかる租税回避行為を防止するため、我が国を含む多くの国において移転価格税制が整備されている。(制度内容自体は各国毎に異なる。)

 

 移転価格税制とは、海外の関連企業との間(例えば親子会社間)の取引を通じた所得の海外移転を防止するため、当該取引が通常の第三者との取引による取引価格(独立企業間価格:ALP, Arm's Length Price)で行われたものとみなして所得を計算し、実態と乖離している場合に課税をする制度である。

 

 

 画一的なみなし利益率が適用される場合

 

 

【中国】

 

・ リスクや機能が限定的である単一機能会社は、金融危機などの特殊要因の影響を受けることはなく、一定の利益水準を確保すべきとする通達(国税函[2009]363号)が出されている。

 

 これを根拠に、「一定の利益が達成できないのは、本社が子会社の利益水準を操作しているためである」等の理由によって、実際よりも高い利益率が適用され、追徴課税を受けた。

 

 

 

 

【ブラジル】

 

・ ブラジル国外から輸入品を仕入れてブラジル国内で販売を行う事業者に対して、販売価格の20%(特定の品目では30%または40%)を利益と見なし課税を行う画一的な税務執行がなされる。(法律12715号)