連帯保証(19)

 

 所得税法64条2項にいう「求償権を行使することができないかどうか」の判断は、主たる債務者を基準に判断すれば足りるものであり、特段の事由がない限り、共同保証人への求償権の存在は考慮する必要がない、

 

 という控訴人の主張に対し、裁判所は以下のように判示しました。

 

 

 所得税は、国内の居住者のすべての所得について課せられるのが原則であるが(所得税法7条1項)、

 

 所得税法64条2項は、『保証債務を履行するため資産の譲渡があった場合において、その履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったときは、

 

 その行使することができないこととなった金額を回収することができないこととなった金額とみなして、

 

 同金額は、所得の金額の計算上、なかったものとみなす。』

 

 旨規定していることからすれば、本件特例が定められた趣旨は、保証債務の履行のためやむを得ず資産を譲渡し、所得を得た者が、求償権行使の相手方が無資力その他の理由で求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったときは、事実上、上記所得を保持することができないので、その行使することができないこととなった金額は、所得の金額の計算上、なかったものとみなすことにより、保証債務の履行のための資産譲渡に係る所得に対して課税しないことにしたものであると解すべきである。

 

 そうすると、共同保証人について求償権が行使できる場合には、計算上、上記譲渡所得を保持することができるのであるから、本件特例の適用を受けることができないと解するのが相当であり、本件特例の適用に際し、求償権を行使することができないかどうかの要件は、主たる債務者のみならず、共同保証人についても必要であるというべきである。

 

 

 したがって、控訴人の上記主張は理由がない。