連帯保証(18)

 

 乙の支払能力について裁判所の判断は以下の通りでした。

 

 

 本件特例が定められた趣旨は、保証債務の履行のためやむを得ず資産を譲渡し、所得を得た者が、求償権行使の相手方が無資力その他の理由で求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったときに、事実上、上記所得を保持することができないため、上記所得に対して課税しないことにしたものであるから、課税の公平上、求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったときとは、求償権の相手方が、破産宣告を受けるか、債務超過の状態が相当期間継続して金融機関や大口債権者の協力が得られない等の事情により、求償権を行使してもその目的が達成されないことが確実になったことを要すると解すべきである。

 

 

 すなわち、求償権を行使してその目的が達成される可能性がある以上、資産を譲渡した者は上記所得を保持し得るということができるからである。

 

 

 これを本件についてみるに、当審証人乙によれば、乙は、B銀行に対し毎月5万円を弁済し、その他の負債についても滞納することなく弁済していること、

 

 

 相続評価1300万円の不動産を所有していること、

 

 

 Cから年額2600万円の収入があること、

 

 

 Cに対し毎月30万円ずつ貸し付けていること、

 

 

 今後も破産申立てをすることなく、他債務の弁済を続けることができること

 

 

 が認められ、これらを総合すると、控訴人が乙に対して求償権を行使してもその目的が達成されないことが確実であるということはできないから、

 

 本件特例にいう「求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったとき」には当たらないというべきである(よって、当審における控訴人の主張(4)は理由がない。)。