原告の主張には齟齬が生じていました。
原告の
「AのB銀行宛約束手形に署名したのは原告であって、これらは、B銀行の担当者からの要請のまま、乙は
一切関知することなく、したがって乙の了解を得ることなく代書したものであり、印鑑も乙の妻丙から乙
に無断で借用し、押印した」
という上記主張は、乙19、20に照らし俄には信用できないばかりでなく、
乙1によれば、審査請求時における原告の主張は、すなわち、
「乙は、B銀行の意向を聞き、形式だけということで、このことを原告に確認した上で実印を原告に渡
し、B銀行の手形に原告が連帯保証人としての乙の記名押印をすることを承諾した。」
旨主張していることとは明白に相違し、この相違は、原告及び乙の上記各供述の信憑性を強く揺るがすものである。
また、Aは原告を中心とする典型的な同族会社であって、
乙は昭和56年3月にAに入社し、昭和58年2月13日にAの取締役に就任していること、
乙は原告の長男であって、同居して生計も一にしていたこと、
乙は自己所有の不動産をAのために担保提供していること
平成5年4月1日に乙を代表取締役として設立されたCは、実質的にAを承継するものであり、
AのB銀行に対する債務を免責的に債務引受をしていること
などの諸事実に照らせば、乙が実質的にもAの債務につき、Aの連帯保証人となることに何らの不自然はない。
原告が乙に説明、了解を得ることなく、乙の署名、押印を冒用して手形保証人欄に署名、押印をし、乙は何も知らずに原告に実印を渡していたなどという原告の主張は採用の限りではない。
と、判示し、
原告が支払ったAのB銀行に対する債務のうち、前記約束手形にかかる原告のB銀行に対する弁済額合計3億1829万6639円については、乙は原告と共に、Aの連帯保証人であったものと認められる。
としました。