連帯保証(10)

 連帯保証の求償権についてまた別の事例を検討します。

 

 

 

 原告は、平成8年4月1日に原告所有不動を売却し、これにより原告が得た代金3億4850万円のうち、3億2000万円は保証債務の履行として、

 

 株式会社Aの株式会社B銀行に対する債務の支払いに充てた。

 

 したがって、本件譲渡によって得られた代金のうち、3億2000万円全額が所得税法64条2項の適用があると、原告が申告したところ

 

 

 課税庁は更正処分として、

 

 そのうちの一部の2分の1は、原告から乙に連帯保証人相互間の求償権がある。

 

 したがって、当該部分には所得税法64条2項の適用はない、とした事例です。

 

 

 原告は、平成8年4月1日、

 

 長男である乙が経営するC株式会社に対して、

 

 原告所有にかかる不動産を3億4850万円で譲渡し、

 

 同年8月30日、上記譲渡代金でAがB銀行に手形借入れのため振出した手形のうちの一部に係る債務3億1500万円、及び手形債務に係る遅延利息157万6380円、手形番号308番に係る利息172万0259円、証書借入れに係る利息39万5911円及び商業割引手形の買戻しに係る遅延利息130万7450円の合計額3億2000万円を代位弁済した。

 

 原告は、上記の代位弁済は本件譲渡物件の売却代金によって保証債務を履行したものであることから、

 

 所得税法64条2項の特例が代位弁済した全額について適用されるとして、

 

 平成8年分の所得税を68万5300円とする確定申告を法定申告期限までに行った。

 

 これに対し、被告は、原告が代位弁済したAの債務については、

 

 一部乙が連帯保証をしており、原告は乙に対して、連帯保証人相互間の求償権(2分の1)を有するとして、

 

 平成10年2月24日付けで、原告の平成8年分の所得税について本件更正処分及び本件賦課決定処分を行った。

 

 

 

争点は以下の通りです。

 

  (1) 原告が支払ったAのB銀行に対する債務について、乙も連帯保証人であるとの事実が認められる

    か。

 

  (2) 右事実が認められるとしても、原告には乙に対して連帯保証人相互間の求償権発生要件を具備して

    いるか。

 

   ア 原告と乙との保証債務の負担割合

 

   イ 原告が2分の1の負担割合を負うとしても、原告は未だ負担割合を超える弁済をしていないもの

    として、乙に対する求償権を得ていないものと認められるか。