確定申告(53)

 

 居住者甲は、平成24年中に認知症高齢者グループホーム用の建物を取得し、本件建物を「グループホーム○○○別荘」として、(株)Aに賃貸しています。

 

 介護事業者は、認知症高齢者グループホームの入居者との間で「認知症対応型共同生活介護契約書」を締結し、本件建物において、入居者に対して介護保険法に定める認知症対応型共同生活介護に係る介護サービスを提供しています。

 

 この認知症対応型共同生活介護とは、介護保険法に定める要介護者であって認知症であるものについて、その共同生活を営むべき住居において、日常生活上の世話等を行うことであり、介護事業者は入居者に対し本件建物を住居として提供し、日常生活上の世話等を行っています。

 

 

 賃料収入および建物の取得費用について消費税の課税関係はどのようになるのでしょうか?

 

 住宅の貸付けは、消費税法上、非課税であり、住宅用の建物を賃貸する場合において、賃借人が自ら使用しない場合であっても、当該賃貸借に係る契約書等において、賃借人が住宅として転貸することが明らかなときは、当該住宅用の建物の貸付けは、住宅の貸付けに含まれることから、居住者甲が収受する本件建物に係る賃料収入は、非課税となります。

 

 一方、住宅と店舗又は事務所等の事業用施設が併設されている建物を一括して貸し付ける場合には、住宅として貸し付けた部分のみが非課税となることから、介護事業者が事務室等として使用する本件建物の部分は、課税となるとも考えられます。

 

 しかし、介護付有料老人ホームの各部分について入居者が日常生活を送る上で必要と認められる部分として、個室及び居間・食堂等、 宿直室等、 厨房等、 スタッフステーション等及び 事務室の一部(入居者のための介護サービスに関する事務を行うために使用する部分)は、いずれも入居者が生活を営む場及び日常生活を送る上で必要な部分と認め、住宅に含まれると解されます。

 

 認知症高齢者グループホームは、入居者が、共同生活を営む住居において、入浴、排せつ、食事等の介護その他日常生活上の世話を受ける場所であることから、単に寝食の場ということでなく、入居者が介護サービスの提供を受けながら日常生活を営む場です。

 

 そこで本件の場合、居住者甲と介護事業者との間で締結されている建物賃貸借契約書において、介護事業者が本件建物を認知症高齢者グループホームの用に供し、入居者に対して本件建物を住居として提供することが明らかであるため、居住者甲が介護事業者に対して行う本件建物の貸付けは、住宅の貸付けに該当します。

 

 なお、賃貸借契約書において、本件建物の敷地を駐車場・駐輪場として利用することも可能としていますが、本件敷地は、本件建物の利用に伴って土地が使用されるものであり、賃料収入とは別にその使用料を収受するものではないこと等から、本件敷地を含めた全体が住宅の貸付けに該当します。

 

 したがって、本件建物の貸付け(本件敷地を含みます。)は、その全体が住宅の貸付けに該当し、賃料収入の全額を非課税として取り扱われます。

 

 また、居住者甲が個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合には、本件建物の取得に係る課税仕入れは、「課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分します。