居住者甲は事業に至らない規模で不動産を貸し付けていましたが、平成23年の収入金額に計上していた未収家賃(50万円)が平成24年に回収不能となりました。
平成23年の不動産所得の金額は赤字ですが、この場合に、平成23年分の回収不能となった未収家賃の額はなかったものとして更正の請求をすることができますか。
○ 所得の内訳(平成23年の当初申告)は以下の通り
給与所得 300万円
不動産所得 -100万円(収入500万円、必要経費600万円)
事業に至らない規模の不動産貸付において、未収家賃が回収不能となった場合、回収不能額のうち、次の①②の金額のいずれか低い金額に達するまでの金額は、その不動産所得の金額の計算上、なかったものとみなされます(所得税法第64条第1項、所得税法施行令第180条第2項)。
① 総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額
(本件の場合、200万円)
② 不動産所得の金額から、回収不能額に相当する総収入金額がなかったものとした場合に計算される不動
産所得の金額を控除した残額
(本件の場合、-100万円-(-150万円)=50万円)
上記の金額は「控除した残額」と規定されていますので、「不動産所得の金額」及び「回収不能額に相当する総収入金額がなかったものとした場合に計算される不動産所得の金額」はそれぞれ黒字の場合を前提としており、これらの金額が赤字の場合にはそれぞれ0円として計算します。
そこで、本件の場合、②の
「不動産所得の金額」は -100万円→0
「回収不能額に相当する総収入金額がなかったものとした場合に計算される不動産所得の金額」
は -150万円→0
したがって②=0、①>② ゆえに 0
結論として、「不動産所得の金額」が赤字の場合には、なかったものとみなされる金額は生じないことから、本件の場合には、更正の請求をすることはできません。