確定申告(29)

 

 税理士で青色申告者のAは、7年前に税理士試験に合格し晴れて独立開業しましたが、平成23年度までは赤字であったため繰延資産(開業費3億円)の償却費を必要経費に算入していませんでした。

 

 M&Aをおこなった会計事務所も軌道に乗り、支払手数料も減少したため、平成24年度は所得が1億6千万円生じました。

 

 Aは、この繰延資産につき平成24年分分及び平成25年分の確定申告において各1億5千万円の償却費を必要経費に算入することができますか。

 

 

 

 繰延資産(開業費)の償却費の計算については、60か月の均等償却又は任意償却のいずれかの方法によることとされています(所得税法施行令第137条第1項第1号、第3項)。

 

 任意償却は、繰延資産の額の範囲内の金額を償却費として認めるもので、その下限が設けられていないことから、支出の年に全額償却してもよく、全く償却しなくてもよいと解されます。

 

 また、繰延資産となる費用を支出した後60か月を経過した場合に償却費を必要経費に算入できないとする特段の規定はないことから、繰延資産の未償却残高はいつでも償却費として必要経費に算入することができます。

 

 したがって、任意償却が可能な繰延資産の未償却残高はいつでも償却費として必要経費に算入することができます。

 

 なお、支出した開業費の内容及びその開業費の額が過年分において必要経費に算入されていないことを明らかにしておく必要があります。