確定申告(26)

 

 甲は、非上場会社であるA社の株式20,000株を所有していたところ、平成22年12月14日に母が死亡し、母が所有していたA社株式40,000株のうち13,333株を相続により取得したため、33,333株を所有していました。

 

 甲は、その所有するA社株式のうち3,600株を、平成24年4月1日に、譲渡時の時価でA社へ譲渡しました。

 

 なお、母の相続に係る相続税の申告において、甲には納付すべき税額が生じていました。

 

 平成24年分の確定申告において、甲のみなし配当課税と、株式の譲渡所得についての取り扱いについて。

 

 

 

(1) みなし配当課税の特例について

 

 措置法第9条の7第1項は、相続又等による財産の取得をした個人でその相続等につき納付すべき相続税額があるものが、その相続の開始があった日の翌日からその相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間にその相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された非上場会社の発行した株式を当該非上場会社に譲渡した場合において、

 

 当該譲渡の対価として当該非上場会社から交付を受けた金銭の額が当該非上場会社の資本金等の額のうちその交付の基因となった株式に対応する部分の金額を超えるときは、

 

 その超える部分の金額について、一定の手続の下、みなし配当課税を行わない旨規定しています。

 

 したがって、本件特例の適用がある場合には、当該譲渡の対価として当該非上場会社から交付を受けた金銭の額は、その全てが株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされることとなります。

 

 

(2) 取得費加算の特例について

 

イ 措置法第39条第1項は、相続等による財産を取得した個人でその相続等につき相続税額があるものが、その相続の開始のあった日の翌日からその相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間にその相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された資産を譲渡した場合には、その譲渡した資産に係る譲渡所得の金額の計算上、その相続税額のうち一定の方法で計算した金額を加算した金額をもってその資産の取得費とする旨規定しています。

 

 

ロ 取得費加算の特例は、相続の開始のあった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に相続税の課税価格の計算の基礎に算入された資産を譲渡した場合に適用があるため、相続等により取得した非上場会社の発行した株式の譲渡について本件特例の適用がある場合には、取得費加算の特例についても同時に適用があることとなります。

 

 

 ハ また、取得費加算の特例の適用に当たり、租税特別措置法関係通達39-20は、譲渡所得の基因となる株式を相続等により取得した個人が、当該株式と同一銘柄の株式を有している場合において、措置法第39条第1項に規定する期間内に、これらの株式の一部を譲渡したときには、その株式の譲渡は相続等により取得した株式から優先的に譲渡したものとして同特例の適用がある旨を定めています

 

 本件譲渡予定株式は、本件特例の適用対象となる甲が母から相続により取得したA社株式13,333株の範囲内の株数であることから、その全てが母から相続により取得したものとして取り扱われることとなるため、

 

 本件譲渡予定株式を譲渡した場合には、その全てに本件特例の適用があり、その結果、甲がA社から本件譲渡予定株式の譲渡の対価として交付を受けた金銭の額について、みなし配当課税は行われず、その全てが申告分離課税の株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされるものと解されます。