避難等対象者への賠償金(2)

 福島第一・第二原子力発電所の事故により被害を受けられた方々に支払われる賠償金について所得税法上課税要件を構成するものは以下の通りです。

 

 

〔個人の事業に関する賠償金〕

 

チ 営業損害

 

 営業損害に対する賠償金は、避難指示等、航行危険区域等の設定、出荷制限指示等、操業自粛要請等、政府が本件事故に関し行う指示等、風評被害又は間接被害による減収分(逸失利益)、及び放射線検査費用、農作物や商品等の廃棄費用等の追加的費用について支払われるものです。

 そのため、事業所得等を生ずべき業務の収益の補償、棚卸資産等の損失に対する損害賠償金又は追加的費用として必要経費に算入される金額を補てんするためのもの(所令30本文かっこ書、94)に該当し、事業所得等に係る収入金額となります。

 

 なお、その賠償金が事業所得等に係る収入金額となるとしても、追加的費用に係るものは、追加的費用が必要経費として収入金額から控除されるので、実質的に課税は生じないこととなるほか、逸失利益に対するものについても、減価償却費等の必要経費を控除した残額が所得として課税対象となります。

 

リ 検査費用(物)のうち業務用の資産又は棚卸資産に係るもの

 

 検査費用(物)に係る賠償金は、出荷制限指示等に基づく検査費用について支払われるものであり、必要経費に算入される金額を補てんするためのもの(所令30本文かっこ書)に該当し、事業所得等に係る収入金額となります。

 

 

 

 賠償金の事業所得等に係る収入金額として算入すべき時期については、権利確定という観点からは、被害を受けられた方が賠償金のお支払に関する合意書を東京電力あてに送付したことにより、東京電力との間で合意等が成立したときになると考えられます。

 

 ただし、被害を受けられた個人事業主の方が、継続して、その補償対象期間に応じそれぞれの年分の事業所得等に係る収入金額に算入し、これに基づいて申告したとしても、費用と収益の期間対応という観点からすれば、このような取扱いをすることも、差し支えないと考えられます。