同族会社に支払った不動産管理料(8)

 先日の判断は、原処分庁の主張を斥けましたが、当該原処分が、信義則に反する違法な処分か否かについては以下のように判断されました。

 

 

認定された事実は以下の通りです。

 

 

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、以下の事実が認められる。

 

(イ) 請求人は、遅くとも平成10年11月6日までには、原処分庁による前々回調査を受け、平成10年11月6

  日付で先々行各年分の所得税の修正申告書を原処分庁に提出した。

 

(ロ) 請求人提出の請求人の先々行各年分の所得税の各確定申告書の控えには、請求人の先々行各年分の不

  動産所得に係る総収入金額は、いずれも○○○○円である旨記載されていたところ、請求人提出の請求

  人の先々行各年分の所得税の各修正申告書の控えには、請求人の先々行各年分の不動産所得に係る総収

  入金額は、いずれも○○○○円である旨記載されていた。

 

(ハ) 前回調査の調査担当職員は、請求人らに対して、本件賃料が請求人に帰属するものであり、本件賃料

  の全額を請求人の収入として計上すべき旨の説明を行った。

 

 

 法の一般原理である信義則の法理の適用により、当該課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより、納税者が当該表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ、後に当該表示に反する課税処分が行われ、そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか、また、納税者が税務官庁の当該表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかの点についての考慮が不可欠であり、

 

 

 本件では

 

 本件管理費は、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入され、原処分のうち、本件管理費に係る部分については、取り消されることになるから、信義則に反するものか否かの判断を要しないと認める。

 

 

(イ) 請求人は、前々回調査において、本件賃料の帰属については原処分庁により検討されたが、何らの指

  摘も受けず、訂正を求められなかった旨主張する。

   しかしながら、前々回調査において、請求人が先々行各年分の所得税の各修正申告書を原処分庁に提

  出した事実は認められるものの、請求人が先々行各年分の所得税の各修正申告書を提出するに至った経

  緯は明らかでなく、

 

   むしろ、先々行各年分とも不動産所得の金額に係る総収入金額の計上漏れの事実を指摘されて修正申

  告書を提出したものと推認されるところ、

 

   本件の全証拠をもってしても、当該計上漏れの収入金額のうちに本件賃料が含まれていなかったか否

  かは明らかでない。

 

 

   仮に、前々回調査において、調査担当職員が本件賃料の帰属について何らの指摘を行わなかったとし

  ても、その事実をもって原処分庁が請求人の経理処理について積極的に是認したとはいえず、

 

   まして、税務官庁が信頼の対象となるべき公的見解を表示したということはできない。

 

 

 

(ロ) また、請求人は、前回調査において、消費税等については修正申告書を提出したものの、所得税にお

  ける本件賃料の帰属については、何らの指摘も受けずに申告是認とされたものであり、仮に、原処分庁

  が税務調査で税法上認められないと指摘したのであれば、修正申告をしょうようし、応じなければ更正

  処分していたはずである旨主張する。

 

 

   しかしながら、請求人は、前回調査において、前回調査の調査担当職員から、本件契約は請求人及び

  MらとK社との間の本件建物の賃貸借契約であり、本件賃料が請求人に帰属する旨の指摘を受けた後

  に、先行各課税期間に係る消費税等の修正申告書を原処分庁に提出したものと認められ、

 

   少なくとも、前回調査の調査担当職員が所得税法上の本件賃料の帰属について請求人ら三名に帰属す

  る旨言及した事実は認められない。

 

 

   かえって、請求人は、前回調査の調査担当職員が本件契約について本件建物に係る賃貸借契約である

  旨及び本件賃料が請求人の課税売上げに該当する旨の説明をそれぞれ請求人に行ったこと、

 

   並びに、

   

   当該各説明の後に請求人の先行各課税期間の消費税等の修正申告書を原処分庁に提出したことは争わ

  ないところ、Fは、前回調査の調査担当職員から本件賃料から地代相当額を受領することについて本件

  契約のままでは認められない旨の指摘を受けたと自認していること、

 

   前回調査の調査担当職員は、請求人らに対して、本件賃料の全額を請求人の収入として計上すべき旨

  説明していることからすれば、前回調査の調査担当職員は、請求人の先行各年分の所得税についても、

  その各確定申告の内容について疑問がある旨の説明等ないし先行各年分の所得税の修正申告のしょうよ

  うを行っていた可能性が高いというべきである。

 

 

   以上のことから、前回調査において、所得税に係る本件賃料の帰属について何らの指摘も受けずに申

  告是認とされた旨の請求人の主張は、その前提を欠くものというべきであり、

 

   原処分庁が請求人に対して所得税の更正処分を行わなかったことは、本件賃料がFらに帰属すること

  についての信頼の対象となる公的見解の表示には該当せず、これについての請求人の主張は採用するこ

  とができない。

 

 実際のところ、請求人は、前々回調査において、調査担当職員の何らかの指摘を受けて先々行各年分の不動産所得の総収入金額を増加する内容の各修正申告書を原処分庁に提出し、

 

 さらに、前回調査において、調査担当職員から本件契約が本件建物を賃貸する内容の不動産賃貸借契約である旨、

 

 本件賃料は請求人に帰属する旨及び本件賃料の全額を請求人の収入金額として計上すべき旨の各指摘及び説明を受けて、先行各課税期間の消費税等の各修正申告書を原処分庁に提出した。

 

 

 それにもかかわらず、請求人は、本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等の各確定申告において、本件賃料が請求人に帰属するものではないことを前提として総収入金額ないし課税資産の譲渡等の対価の額を記載した申告書を提出しているのであって、

 

 これらの申告内容は、少なくとも前回調査における各指摘事項と明らかに異なるものであった。

 

 

 そこで、請求人には、納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてまでも、なお更正処分等に係る課税を免れさせ請求人の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情があるとは認められませんでした。

 

  つまり、調査官の指摘をつっぱねて、申告していたようですから信義則に反するとまでは言えなかったのです!

 

 

 

 

まとめ

 

 客観的に必要経費として認識できる事実を立証できる場合は、同族会社に支払った不動産管理料を経費として処理できるということです。

 

 ここでは、経費割合や金額については明らかでありませんから、専門家と相談する必要はありますが・・・