同族会社に支払った不動産管理料(7)

 請求人が本件の法人に支払った管理費は、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入することができるか否かについて、以下のように判断されました。

 

 

 

認定された事実として

 

 

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、以下の事実が認められる。

 

(イ) 本件法人は、本件建物持分及び本件土地の管理業務をN社に委託しているが、N社は、本件契約の更

  新及び本件建物の補修工事等を行う際に、事前に本件法人に対して文書又は電子メールによって連絡

  を行い、本件法人の代表取締役である請求人の長女Fが当該連絡内容に関する協議及び返信を行ってい

  た。

 

(ロ) K社は、N社だけでなく本件法人に対しても本件建物の補修工事等に係る事前通知を行っており、本件

  法人は、K社から送付された補修工事等の費用負担に係る承諾書に本件法人名による記名押印を行い、

  当該費用負担の承諾を行っていた。

 

(ハ) N社は、本件建物の修繕費、火災保険料及び固定資産税に本件建物持分の割合を乗じて請求人の負担

  額を算出して本件法人に請求し、本件法人は、当該請求額をN社に支払っていた。

 

(ニ) K社の店舗管理を行う部門に所属する社員は、平成20年10月21日に本件建物に係る送水口の改修工事

  に係る状況説明のために本件法人を訪れ、本件法人の代表取締役であるFと面談を行い、当該改修工事

  が完了した際に、工事の状況を示す写真の報告書を本件法人宛に提出した。

 

(ホ) Fは、当審判所に対し、本件法人は平成3年12月にHから本件建物持分及び本件土地の管理業務を受託

  した旨及び本件法人はHの生前から本件建物持分及び本件土地の管理業務をN社に委託していたが、そ

  の委託時期は不明である旨答述した。

 

(ヘ) 本件法人は、本件建物持分及び本件土地の管理業務のほかにFらが相続した賃貸共同住宅の管理業務

  をも行っている。

 

 

 

 以上の事実から導き出した判断は以下の通りです。

 

 

 

 

(イ) 上記イのとおり、ある支出が不動産所得の金額の計算における必要経費に該当するためには、業務関

  連性がなければならないとともに、その必要性の判断においても、単に事業主の主観的判断のみによる

  ものではなく、客観的に必要経費として認識できるものでなければならないと解されるところ、上記

  (ハ)のとおり、請求人の不動産所得の総収入金額に算入すべき金額は本件契約に基づく賃料であること

  から、請求人の不動産所得の必要経費に算入すべき金額も、本件契約に関して支出された費用に限られ

  ることとなる。

   そうであるところ、本件法人は、上記ヘ及びト並びに上記ロのとおり、請求人らから本件建物持分及

  び本件土地の管理業務を受託するとともに、上記(イ)のとおり、本件建物持分及び本件土地の管理業務

  をN社に委託しているが、本件契約の更新及び補修工事等に係る各種連絡を受けてK社及びN社と協議

  し、本件法人名義で本件契約に係る各種の支払を行うなどしている事実が認められることから、本件建

  物持分及び本件土地に対する管理業務を実際に行っているものと認められる。

   そうすると、請求人から本件法人に対して支払われた本件管理費は、請求人のK社に対する本件建物

  持分の賃貸業務の遂行上必要な支出であると認められることから、請求人の不動産所得の金額の計算

  上、必要経費に算入されるものと認められる。

 

(ロ) これに対して、原処分庁は、本件各土地建物に係る管理全般についてN社が行っており、本件法人

  は、請求人ら及びN社に対する金銭の支払行為を行っているものの、本件建物持分及び本件土地の管理

  業務を行っているとはいえない旨主張する。

   しかしながら、本件法人は、本件契約に係る賃貸物件(本件建物)の修繕費等の負担額を支払ってい

  るだけでなく、上記の(イ)、(ロ)及び(ニ)のとおり、補修工事発注前にK社及びN社から連絡を受けて

  議しているほか、K社から送付された補修工事等の費用負担に係る承諾書の返送ないし本件建物に係る

  補修工事状況の確認等を行うなどしているのであって、賃借人であるK社に対する関係においてN社が

  いわば賃貸人ら全員の共通の窓口となっているものの、本件建物持分及び本件土地については、本件法

  人が請求人らの本件建物持分を含む賃貸物件の管理業務の一環として、本件建物持分及び本件土地の管

  理業務を自ら行っているものと認められる。

   そうすると、この点に関する原処分庁の主張は採用することができない。

 

 実際の業務として客観的に認識できるものを行っていたことを立証したことが、当該判断につながったと考えられます。