同族会社に支払った不動産管理料(6)

 本日は本件賃料は、請求人の不動産所得に係る収入金額に該当するか否かについて、どのように判断されたか検討します。

 

 

 

 まず、認定された事実は以下の通りです。

 

 

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、以下の事実が認められる。

 

(イ) 本件相続における本件土地及び本件建物持分の価額等

 

 本件相続に係る相続税申告書において、請求人らが取得した本件土地の評価価額は、1,662,713,382円であり、また、請求人が取得した本件建物持分の評価価額は、144,080,332円であって、請求人らが本件相続により取得した財産のうち、本件土地及び本件建物持分の評価価額の合計額は、1,806,793,714円である旨記載されていた。

 

(ロ) 本件建物持分に係る登記名義について

 

 本件建物持分は、平成5年2月15日付で相続を原因としてHから請求人にその全部の移転登記が経由され、少なくとも平成20年12月31日までは、移転登記が経由されたことはない。

 

(ハ) FがN社に送付した平成15年9月22日付の文書には、要旨、以下のとおり記載されていた。

 

A K社から支払われる賃料を請求人らで分配していたところ、前回調査において、本件契約は、本件建物の

 賃貸借契約であり、FらがK社から土地の賃料を受け取ることはこのままの契約では認められず、また、親

 子間の賃貸借は違法である旨の指摘を受けた。

 

B そこで、顧問税理士と相談した結果、K社に対して請求人側の契約者を請求人1名から請求人ら3名に変

 更するように要請することとした。

 

C K社としては契約者の変更に問題はなく、土地建物一体の契約ということで平成15年覚書を作成しても

 らった。

(ニ) 請求人及び関係者の平成15年覚書に係る答述並びにその信用性

 

 以下の請求人及び平成15年覚書の作成当時のK社の担当者であり、関係者であるRの各答述は、明瞭で具体的であって、格別不自然な点は認められず、平成15年覚書の内容及び上記(ハ)の文書の記載内容等とも整合しており、信用できるものと認められる。

 

A 請求人の答述

 

 請求人ら及びK社は、平成15年覚書を作成する際、請求人らの権利義務及び月額賃料の配分割合を定めるに当たっては、請求人らがHの死亡後、K社から支払われる賃料を本件相続における本件建物持分及び本件土地の相続税評価額を参考にして、請求人が3分の2、Fらがそれぞれ6分の1ずつに分配していたことから、同様の割合とした。

 

B Rの答述

 

(A) 平成15年6月ころ、Fから本件建物の賃貸借契約について、請求人側の契約者を請求人1名から請求人

  ら3名に変更したい旨の要請があり、請求人らの顧問税理士と協議した。

 

(B) 上記の協議の結果、本件契約は、法律的には本件建物の賃貸借契約であるが、請求人が負っている敷

  金の返還債務について連帯保証人であったFらが連帯債務者になりK社にとって有利になること等を勘案

  し、平成15年覚書を作成した。

 

 

 以上の事実により以下のように判断されました。

 

 

 契約内容の法形式上K社からの賃料は本件建物持分の帰属主体である請求人に帰属すると認められ、したがって、本件賃料は請求人に帰属するものと認められる。

 

 平成15年覚書は、その文言に照らしても、本件契約の契約者(契約当事者としての地位)を請求人から請求人らに変更するものにすぎず、本件契約における賃貸借の目的物が本件土地を含むものであることを確認したり、その旨に変更したりするものでもないことは明らかであるから、請求人の上記主張は、その前提を欠くものである。

 

 平成15年覚書は、前回調査の調査担当職員より本件契約に基づいてK社から支払われる賃料に係る課税関係についての指摘を受けたことを契機として、賃貸借の目的物について変更することなく、契約当事者としての地位に基づく権利義務割合のみを請求人らが主張する賃料の取得割合に整合するように変更したものであること及び平成15年覚書作成の前後を通じて生計を一にするという請求人らの生活状況や資産の保有状況に変化は見られないことなどを併せ考えると、平成15年覚書の作成を機に本件賃料がFらに帰属するようになったとみることもできない。

 

 

 

 顧問税理士との協議による覚書作成内容に不備があったように見受けられます。