弁護士会役員の交際費等(1)

 士業の方は連合会と支部の会員となっています。連合会や支部での業務を行ったあと、懇親会があったりするものです。

 

 その懇親会の費用は必要経費でいいのでしょうか?

 

 否認された判決を引用します。

 

 

平成23年8月9日、東京地方裁判所、平成21年(行ウ)第454号更正処分取消等請求事件。

 

1 本件は、弁護士業を営み、弁護士会の役員を務めた原告が、役員としての活動に伴い支出した懇親会費等を事業所得の金額の計算上必要経費に算入し、また、消費税等の額 の計算上課税仕入れに該当するとして申告したところ、税務署長が、これらの費用につ いては、所得税法37条1項に規定する必要経費に算入することはできず、また、消費 税法2条1項12号に規定する課税仕入れには該当しないとして更正処分等をした事案である。

 

 

2 事業所得の金額の計算上必要経費が総収入金額から控除されることの趣旨や所得税法等の文言に照らすと、ある支出が事業所得の金額の計算上必要経費として控除されるためには、当該支出が所得を生ずべき事業と直接関係し、かつ当該業務の遂行上必要であることを要すると解するのが相当である。そしてその判断は、単に事業主の主観的判断によるものではなく、当該事業の業務内容等個別具体的な諸事情に即して社会通念に従って客観的に行われるべきである。

 

3 弁護士は、当事者等の依頼又は官公署の委託によって、訴訟事件、非訟事件等の法律事務を行うことを職務とし、法律事務を行う対価として報酬を得ることで事業所得を得ているのであるから、弁護士が弁護士の地位に基づいて行う活動のうち、所得税法上の「事業」に該当する活動とは、事業主である弁護士がその計算と危険において報酬を得ることを目的として継続的に法律事務を行う経済活動をいうことになる。

 

4 弁護士会及び日弁連の目的は、弁護士等の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことにあり、これらの目的の下に行われる活動等から生ずる成果は、当該活動を行った弁護士個人に帰属するものではなく、弁護士会や日弁連ひいては弁護士等全体に帰属するものと解される。また、弁護士会等は、会費を徴収するなどして活動に必要な支出に充てていること等が認められ、弁護士会等の役員としての活動に必要な資金や人的物的資源は、基本的には弁護士会等によって調達されるものであるということができる。

 

5 以上のような事情の下で原告が弁護士会等の役員として行う活動を社会通念に照らして客観的にみれば、その活動は、原告が弁護士として対価である報酬を得て法律事務を行う経済活動に該当するものではなく、社会通念上、弁護士の所得税法上の「事業」に該当するものではないというべきである。

 

6 そうすると、弁護士会等の役員として出席した酒食を伴う懇親会等の費用については、これらが弁護士会等の役員としての活動との関連で支出されたものであるからといって、原告の事業所得を生ずべき業務に直接関係して支出された必要経費であるということはできない

 

7 原告が弁護士会会長に立候補するための活動費用等は、弁護士会等の役員としての活動との関連で支出されたもの、あるいは、弁護士会等の役員としての活動の準備として支出されたものというのが相当であるから、弁護士会の役員に就任するための活動に必要な費用の支出が、原告の事業所得を生ずべき業務に直接関係して支出された必要経費であるということはできない。

 

8 懇親会費等の各支出は、いずれも原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入できないものであるから、その一部である消費税関連支出は、いずれも「課税仕入れ」に該当するものではないというべきである。