パラツィーナ事件(11)

 平成18年1月24日、最高裁判所第三小法廷も課税庁を支持し、以下のように説示しました。

 

 

〈1〉 本件組合は、本件売買契約と同時に、IFDとの間で本件配給契約を締結し、これにより、IF

   Dに対し、本件映画につき、題名を選択し又は変更すること、編集すること、全世界で封切りをする

   こと、ビデオテープ等を作成すること、広告宣伝をすること、著作権侵害に対する措置を執ることな

   どの権利を与えており、このようなIFDの本件映画に関する権利は、本件配給契約の解除、終了等

   により影響を受けず、IFDは、この契約上の地位等を譲渡することができ、また、本件映画に関す

   る権利を取得することができる購入選択権を有するとされ、

 

〈2〉 他方、本件組合は、IFDが本件配給契約上の義務に違反したとしても、IFDが有する上記の権

   利を制限したり、本件配給契約を解除することはできず、また、本件映画に関する権利をIFDの権

   利に悪影響を与えるように第三者に譲渡することはできないとされ、

 

〈3〉 本件組合が本件借入契約に基づいてオランダ銀行に返済すべき金額は、IFDが本件配給契約に基

   づいて購入選択権を行使した場合に本件映画の興行収入の大小を問わず本件組合に対して最低限支払

   うべきものとされる金額と合致し、また、IFDによる同金額の支払債務の大部分については、本件

   保証契約により、HBU銀行が保証しており、

 

〈4〉 さらに、パラツィーナは、不動産業を営む会社であり、従来、映画の制作、配給等の事業に関与し

   たことがなく、上告人が本件取引についてメリルリンチから受けた説明の中には、本件映画の題名を

   始め、本件映画の興行に関する具体的な情報はなかったというのである。

 

 

 そうすると、本件組合は、本件売買契約により本件映画に関する所有権その他の権利を取得したとしても、本件映画に関する権利のほとんどは、本件売買契約と同じ日付で締結された本件配給契約によりIFDに移転しているのであって、実質的には、本件映画についての使用収益権限及び処分権限を失っているというべきである。

 

 このことに、本件組合は本件映画の購入資金の約4分の3を占める本件借入金の返済について実質的な危険を負担しない地位にあり、本件組合に出資した組合員は本件映画の配給事業自体がもたらす収益についてその出資額に相応する関心を抱いていたとはうかがわれないことをも併せて考慮すれば、本件映画は、本件組合の事業において収益を生む源泉であるとみることはできず、本件組合の事業の用に供しているものということはできないから、法人税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)31条1項にいう減価償却資産に当たるとは認められない。