パラツィーナ事件(10)

 平成12年1月18日,大阪高等裁判所も課税庁を支持しました。

 

 

 

 課税は、私法上の行為によって現実に発生している経済効果に則してされるものであるから、第一義的には私法の適用を受ける経済取引の存在を前提として行われるが、課税の前提となる私法上の当事者の意思を、当事者の合意の単なる表面的・形式的な意味によってではなく、経済実体を考慮した実質的な合意内容に従って認定し、その真に意図している私法上の事実関係を前提として法律構成をして課税要件への当てはめを行うべきである。

 

 したがって、課税庁が租税回避の否認を行うためには、原則的には、法文中に租税回避の否認に関する明文の規定が存する必要があるが、仮に法文中に明文の規定が存しない場合であっても、租税回避を目的としてされた行為に対しては、当事者が真に意図した私法上の法律構成による合意内容に基づいて課税が行われるべきである。

 

 なお、パラツィーナは、パラツィーナが得たものは課税繰延による利益にすぎないから、課税繰延による運用益を否認するためには明文の規定が必要である旨主張するが、法人税法は、第21条で事業年度を設定することにより計算期間を区切り、第22条第1項で各事業年度の所得の金額は当該事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額であるとして所得の金額の計算方法を定めて、各事業年度ごとに所得の金額の計算を行い、右所得の金額に応じて法人税の負担を求めることを原則としているのであり、各事業年度に負担すべき租税を後の事業年度に繰り延べる課税繰延も、租税負担の回避に当たることは明らかであるから、課税繰延も租税回避と同様、法文中に明文規定がない場合でも、事実認定・私法上の法律構成による否認という方法により真実の法律関係に基づき課税が行われることには変りはない。

 

 本件取引は、CPIIが日本の投資家から映画の製作資金を得るために、CPIIないしはメリルリンチが考案した一連の取引であって、その一環をなす本件売買契約について、その当事者らが本件売買契約書所定の権利義務をそれぞれ履行することは当然のことであって、そのこと故に本件売買契約が本件売買契約書所定の内容のものとして当然有効となるものではない,と説示し,

 

 

 本件取引のうち本件出資金は、その実質において、パラツィーナら組合員がエンペリオンを通じ、CPIIによる本件映画の興行に対する融資を行ったものであって、エンペリオンないしその組合員であるパラツィーナは、本件取引により本件映画に関する所有権その他の権利を真実取得したものではなく、本件各契約書上、単に控訴人ら組合員の租税負担を回避する目的のもとに、エンペリオンが本件映画の所有権を取得するという形式、文言が用いられたにすぎないものと解するのが相当である,と判示しました。