パラツィーナ事件(9)

 平成10年10月16日,大阪地方裁判所は以下の通り判示しました。

 

 

 これらの本件配給契約の内容からすると、IFDは、本件映画の管理、使用収益及び処分に関するほとんど完全な権利を行使することができるものとされている一方、エンペリオンは、本件映画の所有者として本来であれば有していてしかるべき諸権利の行使を全く認められていないことが明らかである。

 

 とくに、IFDの裁量と選択により、第三者(第二次配給者)に対して本件配給契約上の地位を譲渡することができ、又は、本件配給契約上の権利を譲渡もしくは許諾することができるものとされていること、第三者からの権利侵害についても、エンペリオンはIFDに対し、必要な措置を取る権限を全面的にゆだねていること、エンペリオンは、IFDに契約不履行等があった場合でも、金銭上の損失の回復を求めることができるのみで、本件配給契約を終了させるなどIFDが有する諸権利を奪うことはできないものとされていることなどを考えると、

 

 

 

 結局のところ、エンペリオンは、本件映画に関して、IFDから金銭の支払を受ける権利のみを有しているにすぎないものと認められる。

 

 

 

 これらの点からすると、本件配給契約をもって、エンペリオンからIFDに対する本件映画の単なる賃貸・配給契約とみることはできないものというべきである。

 

 

 

 原告は、土地建物の管理、賃貸、売買及び仲介等を業とする会社であって、本件取引以前には映画の制作、配給等に関与した事実がないものと認められることに加え、前記の事実のとおり、原告は、組合員は映画興行の相対的成功度によって決まる受領金額と課税上の優遇措置とによって投資収益を得ることができる旨記載のある本件説明書に基づく説明を受けて、エンペリオンに参加することを決定したこと、

 

 本件取引に関する各契約書は、本件組合契約書を除きいずれも英文のものしかなかったことからすると、原告は、映画興行による利益と減価償却費の損金計上等によって生ずる課税上の利益を得ることを目的として、

 

 単に資金の提供のみを行う意思のもとにエンペリオンに参加したものであり、エンペリオンを通して本件映画を所有し、その使用収益等を行う意思は有していなかったものと推認するのが相当である。