パラツィーナ事件(8)

 本日はIFDに対する著作権譲渡担保権付与に係る契約書,他3点概観します。

 

 

 

 エンペリオンの各組合員のIFDに対する著作権譲渡担保権付与に係る契約書としては、Agreement of Assignment of Copyright by way of Securityと題する書面(以下「本件著作権譲渡担保契約書」という。)がある。本件著作権譲渡担保契約書には、概ね次のような規定がある。

  

(イ) 各組合員は、本日、IFDに対する本件オプション契約に基づく一切の債務の履行等を担保するた

   め、本件映画の著作権を譲渡した。

  

(ロ) 本件著作権譲渡担保契約書は、本件オプション担保契約に基づき締結されたものである。

 

 

HBU銀行の保証に係る契約書

 

 

 HBU銀行のエンペリオンに対する保証に係る契約書としては、Guarantee Agreementと題する書面(以下「本件保証契約書」という。)がある。本件保証契約書には、概ね次のような規定がある。

  

(イ) 保証人(HBU銀行)は、ライセンサー(エンペリオン)に対し、配給者(IFD)のアドバンス

   額、ネット支払額及びギャランティ支払相当額の支払を保証し、IFDが右支払をしなかった場合に

   は、原価、費用あるいはHBU銀行又はIFDによって支払われ、源泉徴収される税金の合計額の支

   払をHBU銀行が要求されることがないという条件の下で支払う。ただし、右金額の現在価格がミニ

   マム・ギャランティ額の現在価値を、いずれも年率6.5パーセント月複利の割引率で計算したとこ

   ろで、超えない範囲とする。

  

(ロ) 支払は、円貨により、オランダ銀行のエンペリオンの口座に行われる。

   

著作権の登録

 

 

本件映画の著作権登録原簿には、次のような記載がある。

 

 (1) 本件映画の最初の著作権者は、いずれもCPIIである。

 

 (2) ジェネシスは、平成元年5月19日、エンペリオンの各組合員に対し、本件映画の著作権を譲渡

   し、エンペリオンの各組合員は、同日、IFDに対し、譲渡担保設定契約により本件映画の著作権を

   譲渡した。

   

 

 第二次配給契約

 

 

 IFDは、エンペリオンから許諾されたとされる本件映画に係る配給権なるものを、CPIIに与えた。

 

 

 

以下所見を述べます。

 

 映画に対する投資は,その映画の制作ライン上いなければ,作品そのものに口を挟むことはありません。

 

 映画は一つの総合芸術作品であり,当該作品を創り出すにためには制作部門とファイナンス部門が存在し,よい作品を生み出すのためには,時間とお金をいかにマネジメントするのかということが大切です。

 また,その後の配給についても,分業されているのが現状であり,それが映画産業の構造なのです。

 

 本件ではエンペリオンの作品に対する支配権,使用収益権という観点から所有権を認識せず,本件作品の減価償却費をエンペリオンに帰属させないと判示しました。

 

 しかし,作品に強い影響力を持つのは出資者であり,原始的な作品の所有者は出資者に帰属すべきであると筆者は考えます。映画作品は,ファイナンス部門,制作部門,配給流通部門等,すべての関係者の手によって,人々に伝えられ,最終的に人々の記憶の中に所有されるという運命をたどるものであり,それが映画関係者のレ-ゾンデ-トルなのです。