パラツィーナ事件(3)

今日はオランダ銀行からの借入れに係る契約書を概観します。

 

 

 エンペリオンのオランダ銀行からの借入れに係る契約書としてはLoan Agreementと題する書面(以下、「本件融資契約書」といい、その内容を「本件融資契約」という。)、Assignment Agreementと題する書面(以下「本件債権譲渡担保契約書」という。)及びAccount Pledge Agreementと題する書面(以下「本件口座質権設定契約書」という。)がある。

 

 

(イ) 本件融資契約書には、概ね次のような規定がある。

 

   〈1〉 借主(エンペリオン)は、借入金がジェネシスから本件映画を購入するためにのみ使用さ

      れ、他の目的のためには使用されないことに同意する。

 

   〈2〉 借入金額は、63億7,463万5,012円である。

 

   〈3〉 利息は年率6.5パーセントで月複利とし、利息の計算に当たっては1年を360日とし、

      実際に経過した日数で計算するものとする。延滞利息は、右利率に年率2パーセントを加えた

      利率とする。

 

   〈4〉 エンペリオンは、返済日までに残額を返済しなければならない。ただし、アドバンス額及び

      ネット支払額を受領したときは、直ちにこれに相当する金額を貸主(オランダ銀行)に支払わ

      なければならない。オランダ銀行は、これを受領した時点で返済があったものとする。

       なお、右にいう返済日とは、原則として、借入日から七年目に当たる日を意味する。

 

   〈5〉 政策等によりオランダ銀行のコストが増加した場合、やむを得ないときには、エンペリオン

      は増加コストを支払わなければならないことなどがある。

 

   〈6〉 IFD及びその承継人等が、Option Agreement(以下「本件オプション契約」という。)

      に基づくオプションを行使した場合、エンペリオンは、オプション価格が本件オプション契約

      に基づき支払われる日において、借入金のすべての残額を、期日前返済に伴う何らかの損失金

      とともに支払うことを要求される。

 

   〈7〉 エンペリオンは、オランダ銀行に2口の預金口座を設定し、IFD(及びその承継人)に指

      示し、右預金口座にのみすべての支払を行わせることとする。

 

   〈8〉 エンペリオンは、オランダ銀行の文書による事前の同意なしに、Guarantee

      Agreement(以下「本件保証契約」という。)、Distributoin Agreement(以下「本件配給

      契約」という。)又は本件オプション契約を変更したり、あるいは、いかなる方法によろうと

      も、本件融資契約に基づくオランダ銀行の権利に重大な影響を及ぼすような本件組合契約の変

      更を行ってはならない。

 

 

 (ロ) 本件口座質権設定契約書には、オランダ銀行が、上記(イ)〈7〉の預金口座のうち一口の口座

    に質権を設定する旨の規定がある。

 

 

 (ハ) 本件債権譲渡担保契約書には、エンペリオンは、本件配給契約及び本件オプション契約に基づ

    き、IFDから受領するすべての権利及びその全金額、本件保証契約に基づいてHollandsche

    Bank Unie N. V.(以下「HBU銀行」という。)がした保証に関するすべての権利及びこれらに

    代替するものを本件融資契約に係る債務の担保として、オランダ銀行に譲渡する旨の規定がある。