パラツィーナ事件(2)

平成元年5月19日付各契約書の内容は以下のとおりでした。

 

 

 (1) 組合の結成に係る契約書

 

   エンペリオンの結成に係る契約書としては、「エンペリオン映画投資事業組合組合契約」と題する契

  約書(以下、「本件組合契約書」といい、その内容を「本件組合契約」という。)及びその付属書類で

  ある「組合規約」と題する書面(以下、「本件組合規約書」といい、その内容を「本件組合規約」とい

  う。)があり、パラツィーナほか六社が記名押印している。

 

(イ) 本件組合契約書には、概ね次のような規定がある。

 

 〈1〉 エンペリオンは、本件組合契約及びこれと一体となる本件組合規約に準拠するものとする。

 

 〈2〉 各組合員は、本件組合契約の末尾に記載される金額(以下「出資金」という。)を、平成元年5

    月18日午後1時までに、三井銀行本店において、オランダ銀行東京支店(以下「オランダ銀行」

    という。)のエンペリオン名義の当座預金口座宛に送金することによって払い込むものとする。

 

  本件組合契約末尾の記載によると、エンペリオンは、出資総額26億2,105万円を19口に分割し

 て組合員を募っており、パラツィーナは、その一口分に当たる1億3,795万円を出資することとなっ

 ていた。

 

 〈3〉 各組合員は、アメリカ合衆国デラウェア州法人で日本国内に恒久的施設を置かないエム・エル・

    フィルムとの間でEmpyrean Film Enterprises Management Agreement(以下「本件管理契

    約」という。)を締結することに同意する。本件管理契約に基づき、エム・エル・フィルムは、エ

    ンペリオンの業務執行者となり、各組合員は、エンペリオンの存続中は、本件管理契約による業務

    執行者の任命の取消しをしないことに同意する。

 

 〈4〉 本件組合契約の変更には、組合員全員の書面による合意を必要とする。

 

(ロ) 本件組合規約書には、概ね次のような規定がある。

 

 〈1〉 エンペリオンは、日本国民法の規程に基づく民法上の組合とする。

 

 〈2〉 エンペリオンの目的は、本件映画の所有権及びすべての権利、権原及び権益を購入し、本件映画

    を世界中で、すべての媒体を通じて商業的に利用することにある。このため、エンペリオンは、本

    件映画を購入する契約、本件映画についての全世界における唯一かつ排他的配給者を任命する契約

    及びその他の関連諸契約を、それぞれ締結するものとする。

 

 〈3〉 エンペリオンは、オランダ銀行から約4,620万9,750USドル相当の融資を受け、本件

    映画購入のため、6,206万3,000USドル相当の円貨の支払をする。

 

 〈4〉 エンペリオンは、民法682条所定の事由が早期に発生しない限り、本件映画のいずれかについ

    て、その所有権並びにそれに対する何らかの権利、権原及び権益を保有している限り存続するもの

    とする。この期間が満了する場合、エンペリオンは清算手続に入る。

 

 〈5〉 エンペリオンが解散した場合、業務執行者以外の個人又は会社その他の法人を任命する旨の組合

    の決議がされない限り、業務執行者が清算人となる。清算人は、エンペリオンの現務を結了させる

    ため、必要又は適切なすべての事項を行う権限を有する。

 

 〈6〉 組合員は、エンペリオンの清算前に、エンペリオンの財産の分割を要求する権利を有しない。各

    組合員は、本件組合規約に定める一定の条件の下で持分を譲渡することを除き、任意に脱退するこ

    とができない。

 

 〈7〉 出資比率が50パーセント以上に当たる組合員の要請があった場合又は業務執行者が相当と判断

    した場合、組合員会議が開催されるものとする。右会議において、その出資比率が75パーセント

    以上に当たる組合員の賛成により成立した決議は、業務執行者及び全組合員を拘束する。ただし、

    右決議が本件管理契約において業務執行者が履行すべきものとされている義務の範囲に属しない限

    り、業務執行者を拘束しないものとする。

 

 〈8〉 組合員は、任意であるか非任意であるかを問わず、脱退した場合、エンペリオンに対し現金によ

    る一時払いを請求する権利を有さず、脱退の場合の脱退組合員の持分についてのエンペリオンとの

    清算は、組合員としてとどまった他の組合員が配分を受ける時点で、それと同じ方法及びその限度

    においてされることを誓約し、同意する。

 

 〈9〉 組合員は、エンペリオンが前記(〈3〉)の融資の契約上のすべての債務を完済するまで、さら

    にエンペリオンが本件映画の権利、権原及び権益を保有している限り、エンペリオンの解散動議を

    しないことを誓約し、同意する。