庭内神し

概要

 

 Xは、P市Q町○―○の宅地572.73(以下「本件土地」という。)を所有し、自宅敷地の用に供していたが、平成19年3月○日死亡し、本件相続が開始した。

 

 本件相続に係る共同相続人は、いずれも本件被相続人の子である請求人ら3名である。

 

 本件土地の北側部分には、それぞれ「稲荷」及び「弁才天」を祭ったほこら2基(以下「本件各ほこら」という。)が設置されており、本件各ほこらの敷地部分(以下「本件敷地部分」という。)の面積は、合計21である。

 

 なお、本件土地は、周囲を塀等で囲まれており、本件被相続人の親族以外の者が、本件各ほこらに自由に参拝することはできない。

 

 請求人らは、本件敷地部分について、相続税法第12条第1項第2号に規定する非課税財産に該当するとして、本件申告をしたが、原処分庁は、本件敷地部分は非課税財産に該当しないとして、本件各更正処分を行った。

 

 

 

 原処分庁は当初、

 

 民法第897条第1項は、系譜、祭具及び墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継すると規定しており、これらのものは日常礼拝尊崇されているものであることにかんがみて、相続税法第12条第1項第2号により相続税の非課税財産とされている。

 

 そして、基本通達12-1は、民法第897条第1項の「墳墓」と相続税法第12条第1項第2号の「墓所、霊びょう」の解釈を同様にするために定めたものと解され、相続税法第12条第1項第2号の解釈を拡大する趣旨のものではなく、庭内神しの敷地については基本通達12-1の範ちゅうではなく、また、他に庭内神しの敷地を非課税財産とする旨の規定等もない。

 

 したがって、本件敷地部分は、相続税法第12条第1項第2号に規定する非課税財産とは認められない、

 

 としていました。

 

 

 

 平24年6月21日 東京地裁判決(Tains Z888-1664)では、相続財産の土地のうち、弁財天及び稲荷を祀った各祠の敷地部分が、相続税法12条1項2号に規定する非課税財産(墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの)に該当するか否かについて争われ、本件各祠は、少なくとも庭内神し(屋敷内にある神の社や祠等といったご神体を祀り日常礼拝の用に供されているもの)に該当するので、相続税法12条1項2号に規定する「これらに準ずるもの」に該当することは明らかであると判断した上で、その敷地についても、次のとおり、非課税財産に該当するとして、納税者勝訴の判決を言い渡しました。

 

 また、本件敷地は、外形上、小さな神社の境内地の様相を呈していること、機能上、本件各祠、附属設備(石造りの鳥居や参道、砂利敷き等)及び本件敷地といった空間全体を使用して日常礼拝が行われていることに鑑みると、本件敷地は各祠と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地ということができるので、本件敷地は、相続税法12条1項2号に規定する「これらに準ずるもの」に該当する、との判示をうけ、国税庁は

 

 

「庭内神し」の敷地については、「庭内神し」とその敷地とは別個のものであり、相続税法第12条第1項第2号の相続税の非課税規定の適用対象とはならないものと取り扱ってきました。しかし、「庭内神し」の設備とその敷地、附属設備との位置関係やその設備の敷地への定着性その他それらの現況等といった外形や、その設備及びその附属設備等の建立の経緯・目的、現在の礼拝の態様等も踏まえた上でのその設備及び附属設備等の機能の面から、その設備と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地や附属設備である場合には、その敷地及び附属設備は、その設備と一体の物として相続税法第12条第1項第2号の相続税の非課税規定の適用対象となるものとして取り扱うことに改め、この変更後の取扱いは、既に相続税の申告をされた方であっても、相続した土地の中に変更後の取扱いの対象となるものがある場合には適用があります、とコメントを発表しています。