知的資産経営(5)

 

STEP5「価値創造のストーリー」

 

 

「複合カフェ」、「コミックレンタル」事業者ともに、コミックを取り扱う新興業態であるという点で共通しており、コミックを軸に

 

① 仕入力、

② 物流力、

③ 加工力、

④ 情報力、

⑤ 営業力

 

という過去から現在までの間に培った5つの強みをもつ当該会社にとって、これら2つの市場を同時に標的とすることには、大きな事業シナジーが存在します。

 ゆえに当該会社がこれまでの事業展開で構築したローコストオペレーション体制と、今後もさらに拡大を図る圧倒的な市場シェアを背景に、取扱数量の拡大にともない単位あたりのコストが低減する「規模の経済性」、異なる複数の事業で共通可能なコストを一元化することで単位あたりのコストが低減する「範囲の経済性」が見込め、増収・増益に資する「経営の効率化」の実現が可能となります。

 当該会社では副資材やPOPの供給、そして在庫検索システムの供給といった直接的な店舗あたり単価の上昇を狙うだけでなく、他社との協働のもと当社の強みを活かし、間接的にも店舗あたり単価の向上を図る方策、すなわち納入店舗以外からも利益を創出する仕組みとして、「複合カフェ」や「コミックレンタル」店に設置するフリーペーパーの配送サービスを実施します。これにより、社外ステークホルダーとの協調による経営資源の有効化である「連結の経済」を実現します。

 これら2つの市場は新興市場であるがゆえに、このような市場に対してアプローチするには、経営の機動力が求められます。よって、

 

① コンパクトなマネジメントチームを目指し、

② シェアド・マネジメント(社外ブレーンの積極的な登用)を図ります。

 

このような取り組みにより、市場ニーズの変化に対し迅速かつ柔軟な意思決定を行い、「経営の機動力」がもたらす「スピードの経済」を実現し、市場競争力を高めてまいります。

 

 

 

 以上が基本的な知的資産経営報告書のコアとなる、非財務情報です。外部には理解しづらい、独特のビジネスモデルをステークホルダーに理解してもらうために作成した企業のモデルです。

 

 「新刊・中古にとらわれず独自の物流や営業で新興市場(複合カフェ・コミックレンタル)を開拓し、ここに書籍を始めとする商材・サービスを供給するモデル」という、従来はなかったビジネスモデルを理解してもらうために、既存の中古本販売や新刊卸売との差別要因を知的資産の観点から、自社独自の「5つの強み」として分類、記載されました。また、市場認識を深める為に、標的市場の動向などについても記載されました。尚、グリーンシート登録企業として、投資家を意識し、財務情報との関連性も意識して作成されています。

 

 

 

この報告書を作成した当該会社は次のようにコメントしました。

 

 

 

 作成作業を通じて自社の強みや弱みを再認識いたしました。また、報告書に記載する全ての文言に読み手を意識して作成することの重要性を認識いたしました。弊社は事業内容が一言では説明しづらい事業を営んでおりますので、「知的資産経営報告書」の提示がステークホルダーの弊社対する理解力向上に繋がると考えます。

 使い方は金融機関や投資家に対する報告が一般的ですが、弊社の場合は人材採用活動にも利用することを予定しております。

 特に今年度は事業内容に興味をもってくれる学生を採用したいと思っております。そのためのツールとしてはとても有意義であると思います。

 毎年、有価証券報告書を作成していますが非財務情報としての位置づけや上記の目的で毎期作成したいと思っています。

 

 財務開示情報とともに非財務情報を開示することで、外部利害関係者等に適切かつ有効な企業情報を伝えることができると筆者は考えます。